2015年7月31日(金)
主張
「後方支援」の実態
「命が危険」こそ国際的常識だ
参院で本格的な審議が始まった戦争法案は、海外で戦争をしている米軍をはじめ外国軍隊に対し、自衛隊が、従来は活動が禁止されていた「戦闘地域」であっても、輸送や補給などの「後方支援」(兵站〔へいたん〕)を行うことを可能にしています。政府は、「後方支援」は「安全な場所で行う」とか、「他国軍隊の武力行使と一体化しない」といった弁明を繰り返しています。しかし、日本共産党の小池晃副委員長が安保法制特別委員会の質問(29日)で示したように、政府の弁明は、戦争の実態からも、国際的な常識からも、あまりにかけ離れていることは明白です。
戦争の現場で実際何が
安倍晋三首相は、戦争法案が定める「後方支援」について「危険を回避し、安全を確保することは当然だ。これは国際的な軍事常識と言ってもよい」「相手の攻撃対象となることは明らかといった指摘は当たらない」などと述べています。ところが、実際の戦争の現場では何が起こっているのか―。
小池氏が明らかにしたのは、アフガニスタンやイラクで部隊や前進基地に補給する燃料や水などの輸送中に攻撃を受け、多数の死傷者が出ていることを分析した米陸軍の報告書です。両国での補給任務中の死傷者は5年間(2003〜07米会計年度)で3000人を超え、陸軍の死傷者全体の10〜12%を占めるなど、極めて深刻なことが分かります。
例えば、アフガンでは07会計年度に燃料の輸送任務は897回に上り、輸送車隊が武装勢力の襲撃などを受けて38人の死傷者が出ています。24回の輸送ごとに1人の死傷者が出た計算です。報告書が「戦域での軍隊に対する燃料・水の補給は命がけだ」と強調している通り、補給や輸送の兵站は極めて危険な活動に他なりません。
米海兵隊の計画文書も「アフガンでは険しい地形や困難な天候条件の中で燃料や水をトラックで長距離運ばなければならない。輸送車隊は伝統的戦闘や非対称の攻撃(テロ攻撃など)に脆弱(ぜいじゃく)で攻撃目標になる」として、護衛のために戦闘部隊を転用せざるを得ない状況を問題にしています。
「兵站は軍事攻撃の格好の標的であり、対テロ戦争のような、相手が無秩序に突然の攻撃を仕掛けてくる攻撃には最も弱い」(小池氏)のが現実であり、これこそ「国際的な軍事常識」です。
小池氏が暴露した海上自衛隊の内部資料も重大です。
戦争法案を説明した同資料には「後方支援」の「実際の運用を踏まえたイメージ」として、敵潜水艦への攻撃を行う米軍の対潜哨戒ヘリに対し、海自のヘリ空母が燃料を補給する図が描かれています。海自ヘリ空母が敵潜水艦の魚雷の射程外にあるという条件が付いているだけで、給油のほか弾薬提供や整備も可能だとしています。「世界中の誰が見ても、自衛隊が(米軍と)一緒に戦争している、一体となって武力行使をしている」(小池氏)ことにしかなりません。
違憲の法案は必ず廃案に
戦争法案で可能になる「後方支援」が「他国軍隊の武力行使と一体化しない」という説明はもはや成り立ちません。「後方支援」は戦闘を呼び起こし、米軍の武力行使とも一体化する―。違憲性がいよいよ明白な法案は廃案しかありません。