2015年7月25日(土)
参院選挙制度改革
比例代表を中心に
改定案は抜本改革先送り
井上日本共産党参院幹事長に聞く
参院本会議で24日、自民党と4野党が提出した参院選挙制度「改革」の公職選挙法改定案が賛成多数で可決され、衆院に送付されました。参院選挙制度改革のあり方や同法案の問題点などについて日本共産党の井上哲士・参院幹事長に聞きました。
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―参院政治倫理・選挙特別委員会での審議を一切やらずに本会議での採決になりました。
質疑の省略は本末転倒です
25日のちょうど1年後が改選参院議員の任期です。選挙制度の改定内容の周知期間を1年間確保するため、24日までに参院で法案を可決することが必要だという理由で委員会質疑が省略されました。しかしこれは本末転倒です。
選挙制度をどうするのかということは、国民の基本的権利、議会制民主主義の根幹にかかわる問題です。委員会における開かれた議論は不可欠です。会派間の協議を重ねたからといって代替できるものではありません。
参院の歴史をみても、委員会審査が省略されたのは国会法や人事院勧告に関する法案など全会派一致のごく限られたものだけです。
―自民・4野党案はどのような問題点があるのでしょうか。
「地方軽視」の反発をまねく
従来の○増○減方式に一部合区を組み合わせ、当面の格差を3倍におさめようというものにすぎず、1票の価値の平等という憲法の要請にこたえるものではありません。3年前の「4増4減」案に続いて、抜本改革をさらに先送りするものです。一部の県のみを合区することは数合わせの感が否めず、合区対象県から「地方切り捨て」「地方軽視」などの反発を招いています。また、合区による格差の是正は、今後の人口変動の予測をみれば、新たな合区が必要となります。
民主・公明党などが提出していた法案も、1票の格差は2倍以内におさまっていますが、合区については自民・4野党案と同じ問題が生じます。しかも合区対象は20県と全体の4割を占め、合区でない県との不公平感はいっそう顕著になります。
―そもそも、参院の選挙制度改革をめぐっては何が問われているのでしょうか。
最高裁判決にこたえた主張
この問題は、2009年9月の最高裁判決が、最大格差が5倍前後に達している参院選挙区定数配分について、投票価値の平等の観点から選挙制度の「仕組み自体の見直し」を提起したことが契機です。
日本共産党は、この間の各党協議にあたり(1)制度改革の根幹は1票の格差是正であり、議員定数の削減は行わずに格差是正を実現すること(2)選挙制度を考える上で最も大事なのは多様な民意を議席に正確に反映させること―という基本的な見地に立って議論してきました。新しい選挙制度は、得票数が議席に正確に反映される比例代表を中心とした制度とすべきだと主張し、11年に西岡武夫参院議長が提示した当初案=総定数を維持しブロックごとの比例代表で格差是正をはかる案をたたき台にして各党が議論することを提起しました。
12年に再度出された最高裁判決は、10年の参院選を「違憲状態」とし、「都道府県…を参議院選挙の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はない」「仕組み自体を見直すことが必要になるものといわなければならない」と述べています。わが党の主張は、これにこたえたものです。しかし、5年間におよぶ各党協議は結局合意に至りませんでした。極めて残念です。
―法案は衆院に送付され来週にも採決されるといわれていますが。
法案は付則で、次々回(2019年)の参院選にむけ選挙制度の抜本的見直しについて検討を行い、必ず結論を得ると明記しています。しかし、どのような見直しなのか明らにはされていません。
日本共産党は、国民の声が正確に反映される選挙制度の抜本改革をめざし、引き続き奮闘する決意です。