2015年7月25日(土)
きょうの潮流
「民主主義者」そのものだった―。行動する知識人といわれた鶴見俊輔さんを、作家の大江健三郎さんはそう評しました。だれとでも胸襟を開き、分かり合える部分を模索する。鶴見さんの周りには、いつも人が絶えませんでした▼市井の哲学者でした。「思想が最も具体的な活動をとおしてのみ、現実を動かす力になると信じる」。政治、教育、文学、世相から生活まで。人間の営みに興味をもち知見を広め、独自の考え方を築いていました▼幅広い思想には反戦平和の強い芯があります。戦争の中で生き、非人間的な軍隊の日常を体験した青年は「私は1億人の中の1人になっても、憲法9条を守る」という信念を持ち続け、実践しました▼戦前から一貫して戦争に反対してきた日本共産党にも深い信頼を寄せていました。それは久野収との共著『現代日本の思想』の中にある有名な一節に象徴されます▼「すべての陣営が、大勢に順応して、右に左に移動してあるく中で、日本共産党だけは、創立以来、動かぬ一点を守りつづけてきた。それは北斗七星のように、それを見ることによって、自分がどのていど時勢に流されたか、自分がどれほど駄目な人間になってしまったかを計ることのできる尺度」になってきたと▼日本共産党と同い年、反戦の根っこも一緒の鶴見さんは「ずっと共産党に投票してきた」。いつもより平和の声高い夏。93歳の生涯を閉じるまで信念を貫いた鶴見さん。その思いはいま、若い世代に脈々と受け継がれています。