2015年7月23日(木)
マイナンバー制度
順番あべこべ 758自治体
情報保護評価―安全の柱 機能せず
政府が10月に番号通知をめざしているマイナンバー(共通番号)制度で“安全性”の柱の一つとしている、「特定個人情報保護評価」(PIA)は、取り扱われる個人情報がしっかり保護できるかどうかを、自治体などが事前に評価する仕組みです。ところが全国の市町村の4割超にあたる758自治体が当初定められた順番と逆の作業をしていることが22日、わかりました。“安全”の柱が、骨抜きとなっている実態が浮かびあがってきました。(矢野昌弘)
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各市町村では、今年10月に予定するマイナンバーの番号通知に向けて、住民基本台帳システムの改修をすすめています。
システム改修に着手する前の設計段階で、行わなければならないのが「特定個人情報保護評価」です(図)。
PIAは、改修するシステムがプライバシーに配慮したものか、漏えいの危険はないか、事前に調べて、「保護評価書」として公表するもの。
マイナンバー導入にあたって、政府が鳴り物入りで新設した制度です。マイナンバー制度を監督する第三者機関「特定個人情報保護委員会」が昨年4月に作成した指針にも盛り込まれています。
ところが、総務省によると、今年3月末までにシステム改修を終えた地方公共団体(市町村)は、1661。一方で、「保護評価書」を3月末までに公表した地方公共団体は903に過ぎず、少なくとも758の自治体が、手順が逆さまになっていることになります。
福岡市では、昨年4月に改修に着手し、プログラミングを開始したのは昨年10月です。ところが、PIAを公表したのは今年6月8日となっています。東京や大阪などの各市、特別区などでも、同様の逆さまが明らかになっています。
なぜ、多くの自治体でPIAとシステム改修の順番がアベコベになるのか。そこには、「昨年10月までにプログラミングを開始した自治体は、マイナンバーを保有するまでにPIAが完了すればよい」という制度を骨抜きにするような“経過措置”の存在があります。
福岡市も「経過措置にのっとって行った」自治体の一つです。福岡市の担当課は「PIAを秋から始めて、今の時期に設計などをしたら、制度実施に間に合わないのが見えていたので、やむをえず先行せざるをえなかった」と説明します。
マイナンバーの“安全”を担保する制度が骨抜きにされる背景には、何が何でも今年10月に番号を配布するという政府の“スケジュールありき”の姿勢があります。