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2015年7月17日(金)

戦争法案審議中継と公共放送NHKの責務

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 NHKは戦争法案が衆議院を通過した16日、「本会議中継せず」の予定を昼すぎに急きょ変更して、本会議の各党討論などを中継しました。

中継なしで抗議

 NHKは前日の15日、安倍首相も出席した安保法制特別委員会の締めくくり総括質疑を中継しませんでした。NHKは「数字は明らかにしないが、多数の抗議が寄せられた」(広報)と認めています。

 15日の事態に対しては、多くの著名人も抗議を表明。神戸女学院大名誉教授の内田樹氏はツイッターで「NHKは報道機関として歴史的汚点を残すことになりました。多くの職員が恥じ入っていることでしょう」と発信しました。

 ほかにも、「これほど国民の関心が高い法案を無視して、“公共放送”と言える?」(文筆家・乙武洋匡氏)、「NHK国会中継がないこと、残念。ネットで見るノウハウを持たない方もたくさんいらっしゃいます」(脳科学者・茂木健一郎氏)などの声が飛び交いました。

 「15日の委員会ばかりか、16日の本会議も中継しないのか」との国民・視聴者の怒りと抗議の結果、NHKを「16日本会議中継」に追い詰めたといえます。

 しかし問題は、「衆院通過」直後のNHKニュースが、「法案成立の公算が大きくなった」とのテロップや解説を繰り返し流したことです。

審議の展開無視

 戦争法案は参院の審議がこれからであり、衆院を通過したからといって、自動的に成立するわけではありません。何より戦争法案反対の国民世論は根強く、とくに「今国会成立」にはどの世論調査でも6割以上の国民が反対しています。

 議会の仕組みも無視して「成立公算大」を前面に押し出すのは、国民に「反対をあきらめろ」と言っているに等しいものです。参議院の存在と審議の展開をまったく無視した「世論誘導」は、国民世論や議会制民主主義の否定につながるものです。

 NHKが「順守する」と表明している放送法は、その目的に「放送が健全な民主主義の発達に資する」ことを掲げています。国民・視聴者の受信料で成り立っているNHKが、いかに国民世論を正面から受け止め、公共放送の職責を果たしていくのかが、いま鋭く問われています。

 (小寺松雄)


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