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2015年7月15日(水)

笹子トンネル事故 “引責”の中日本高速元役員

丸抱え法人の専務理事に

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 9人が死亡した中央自動車道の笹子トンネル崩落事故当時、維持管理担当だった中日本高速道路の役員が“引責”退任の半年後に、同社“丸抱え”の特定非営利活動(NPO)法人の専務理事に就任し、報酬を得ていることが14日、本紙の調べでわかりました。事故への無反省ぶりが見えてきます。 (矢野昌弘)


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(写真)NPO法人「道路の安全性向上協議会」が事務所を置く中日本ハイウェイエンジニアリング名古屋の東京分室(一部画像処理しています)=東京都港区高輪

 NPOの専務理事になっていたのは、事故が起きた2012年当時、中日本の代表取締役だった吉川良一氏(66)。同社の維持管理の責任者として、保全・サービス事業本部長も兼ねていました。

 翌13年6月、吉川氏は所管する国土交通省の主導で同社を退任。事故を受けた「道路の維持管理を担当する吉川氏の事実上の引責辞任」(「日経」13年6月1日付)などと報じられました。

個人会員は2人

 ところが、吉川氏は14年1月にNPO法人「道路の安全性向上協議会」を設立し、専務理事になっています。

 同NPO法人の定款によると、「道路の交通安全対策や維持管理に携わった経験、知識と実績を基に」社会に貢献するとしています。

 13年度の事業報告を見ると、NPOが中日本の“丸抱え”であることがわかります。

 個人会員は、わずか2人。1人は専務理事の吉川氏で、もう1人は理事長の大学教授です。一方、法人会員は高速道路関連の企業12社。このうち10社は中日本のグループ企業です。NPOの収入のほとんどを、法人会員の会費が占めます。この会費を原資に、吉川氏は、NPOから報酬を得ていました。

 このNPOには、理事長、専務理事のほか3人の役員がいますが、笹子トンネルの点検を担当する中日本ハイウェイエンジニアリング東京の岩田久志社長ら、中日本グループの社長が名を連ねます。東京都港区のNPO事務所は、中日本ハイウェイエンジニアリング名古屋の東京分室となっています。

 中日本の最高幹部だった吉川氏の処遇目的でNPOが設立された疑いが浮かびます。

 本紙に対し、吉川氏は「当NPOは取材対応は致しておりません」と取材を拒否。中日本は「(吉川氏のNPO活動を)把握しているが、関与はしていない。グループ会社と吉川氏の関係はわからない」と答え、エンジニアリング名古屋は「活動に賛同して加入しているだけ。吉川氏を処遇しているわけではない」としました。NPOから家賃を得ていると説明します。

 吉川氏は青年5人の遺族から、損害賠償を求められている4人の役員の一人。6月30日の横浜地裁で「打音点検をしても、(ボルトの脱落は)わからないだろうと(今は)思う」と、過失を全面否定していました。

「反省」とは真逆

 犠牲者の石川友梨さん=当時(28)=の父、石川信一さん(65)は「遺族の感情からすると、あまりにも非常識だ。事故を『真摯(しんし)に反省』というなら、自らを律すべきだが、実際は真逆のことをやっている。無償の活動ならともかく、報酬を得ているのは論外で、どこまで遺族を愚弄(ぐろう)するのか」と語ります。


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