2015年7月9日(木)
労働者派遣法改悪案に対する
参院本会議 辰巳議員の質問
日本共産党の辰巳孝太郎議員が8日の参院本会議で行った、労働者派遣法改悪案に対する質問(要旨)を紹介します。
「『業績が悪いから』の一言で切られる。私にも日々の暮らし、家族があり、安定した生活を求めている」。ある派遣労働者の声です。今でも多くの派遣労働者が「派遣は低賃金で不安定。法改定で直接雇用の道が閉ざされる」と、怒りの声を上げ続けています。
低賃金・不安定規制緩和さらに
労働者供給事業は職業安定法で禁止されています。戦前の「人貸し業」が労働者を苦しめ、「蟹工船」にも描かれたようなひどい無権利状態を招いたからです。ところが1985年の労働者派遣法制定以降、99年に原則自由化、2003年に製造業にまで広げられ、ILOが指摘するとおり「日本は世界最大の派遣市場を持つ国」となりました。その結果、リーマン・ショックを理由に「派遣切り」が行われ、社会問題になり、不十分ながら派遣法の見直しも行われました。
ところが本法案はそんな反省もなく規制緩和を進めるものです。総理が目指す「世界で一番企業が活躍しやすい国」とは低賃金・不安定雇用を広げて格差と貧困を深刻にし、国内需要を冷え込ませることになるのではありませんか。
現行派遣法は「常用雇用の代替にしてはならない」との大原則があり、「臨時的・一時的業務に限る」としてきました。原則1年最長3年を超えても必要な業務は直接雇用すべきだということです。
ところが改定案では人さえ代えれば派遣を使い続けることができます。「常用代替の禁止」は実効性を失うのではないですか。
別の部署に異動させれば永続的に同一の派遣労働者を使い続けることができます。正社員を派遣で置き換えることができるのではありませんか。改定案では、同一事業所での派遣労働者の受け入れ上限は3年としています。しかし、過半数労働組合等から「意見聴取」をすれば3年を超えて受け入れることができます。どこが「歯止め」になるのですか。
直接雇用の義務派遣先に課さず
政府は「雇用安定措置をとる」としています。その一つが派遣元による派遣先への直接雇用の依頼の義務付けですが、あくまで依頼の義務付けです。
「正社員への道を後押し」するため、教育訓練等によってキャリア形成支援を行うとしています。しかし、派遣労働者には正社員と同等以上の技術や経験を持つ方がたくさんおられます。必要なのは派遣先での正社員化、直接雇用の義務化ではありませんか。
違法派遣があれば派遣先に直接雇用を義務づける「労働契約申し込みみなし制度」が10月1日施行されます。「派遣切り」を契機に盛り込まれました。
しかし改定案成立で9月1日施行となれば、「専門業務偽装」「期間制限違反」などは発生しなくなり、「みなし制度」は発動されません。直接雇用の道が開かれるはずだった派遣労働者は救済されません。違法を合法に変える法改定であり労働者への背信行為です。
労働者保護せず企業免責・救済
日本経団連は2013年の提言「今後の労働者派遣制度のあり方について」で、「みなし制度は施行前に廃止すべきである」と求めてきました。これに応えようというのが本音ではありませんか。
派遣労働者を保護する法案でも何でもなく、「派遣先企業免責・救済法」ではありませんか。政府が行うべきは、直接雇用、正社員が当たり前の社会であり、欧州では当然の同一労働・同一賃金が徹底される社会の実現です。安倍政権の暴走をストップさせ、稀代の悪法を3度廃案にするため、すべての労働者とスクラム組んでたたかうことをお約束し、質問を終わります。