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2015年7月4日(土)

主張

「刑事司法改革」

新たな人権侵害を広げる危険

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 国会で刑事訴訟法等の「改正」案が審議されています。法案は、取り調べの録音・録画(可視化)のわずかな導入と引き換えに、警察・検察に盗聴捜査の拡大と、他人をえん罪に引き込む危険のある「司法取引」の権限を与えるものです。法曹界、刑事法学者、諸団体の反対運動が広がり、審議でも重大な問題が明らかになっています。日本共産党は政府に法案の撤回・廃案を求めます。

盗聴拡大と司法取引導入

 日本は死刑再審無罪4事件や氷見(ひみ)事件、志布志(しぶし)事件、厚労省元局長事件、足利事件、布川(ふかわ)事件など、えん罪がひん発しています。最大の問題は、被疑者・被告人に対する密室での自白強要を中心とした捜査と供述調書を偏重する裁判にあります。日本共産党は自白強要の温床=代用監獄制度の廃止、取り調べの全過程の録音・録画、弁護人が取り調べに立ち会う権利の保障、証拠の全面開示など改革を求めてきました。国連自由権規約委員会も日本政府に繰り返し、改善勧告を出しています。

 しかし法案は、改革に背を向けた重大な問題を持っています。

 第一は、盗聴捜査(通信傍受)を飛躍的に拡大することです。大体、盗聴捜査は通信の秘密、令状主義を侵す違憲立法です。法案は盗聴対象を犯罪集団の組織犯罪に限定していたものを、傷害・窃盗・強盗・詐欺・恐喝などに拡大しており、盗聴が一般的な捜査手段になりかねません。通信管理者の立会人を排除し、通信管理者に命じて全ての通信を暗号化し警察のコンピューターに伝送させ、暗号を復元して盗聴できるようにします。

 衆院法務委員会で日本共産党の清水忠史議員は、現行法の下でも、一つの事件で携帯電話を2721回盗聴し、すべて犯罪と無関係であった事実を告発しています。ある容疑者の携帯電話、電子メールなどが盗聴対象となると、犯罪と無関係の通信が警察に「盗み聴き・盗み見」され、プライバシー侵害がさらに大規模となることは明白です。

 第二の問題は、警察官、検察官が被疑者と協議し、「他人の犯罪事実」を供述することと引き換えに、自分の犯罪について不起訴や軽い罪での起訴など、便宜をはかってもらう「司法取引」制度導入です。被疑者・被告人のウソの供述を証拠に、犯罪と無関係の他人がえん罪で引っ張られた事件が少なからず起きており、共犯者の供述を「司法取引」で利用すると、えん罪の危険はいっそう高まります。

 第三の問題は、取り調べの録音・録画が、疑問の多い制度設計となっていることです。取り調べの録音・録画の対象事件は、裁判員裁判で扱う事件と検察独自事件で、刑事裁判全体の2%にすぎず、録音・録画していると被疑者が十分な供述をしないと捜査官が判断した場合など広く除外できます。

 しかも、自白した時の録音・録画を出せば、脅したりすかしたりする途中の過程を隠しても任意の自白の証明になるというのです。こんな制度では捜査側の自白強要が続くことは明らかです。

戦争法案の野望の一環

 盗聴拡大、「司法取引」など、この法案は、安倍内閣の戦争法案の野望と結んだ治安強化策の一環です。新たな人権侵害を広げ、えん罪防止に逆行する法案反対の運動を強め、廃案に追い込みましょう。


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