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2015年6月26日(金)

世界から見た戦争法案の異常と危険

外国特派員協会 志位委員長の講演

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 日本共産党の志位和夫委員長が23日、日本外国特派員協会で行った講演と記者との一問一答を紹介します。発表にあたって、修正・加筆を行っています。


 今日は、ご招待いただきまして、まことにありがとうございます。日本共産党の志位和夫でございます。

 この間、安倍政権は、「平和安全法制」の名で11本の法案を国会に提出し、激しい論戦が行われてきました。私たちは、憲法9条を全面的に破壊する戦争法案が正体だと、追及してきました。

 今日は、「世界から見た戦争法案の異常と危険」と題して、冒頭、若干の時間をいただいて、お話をさせていただきたいと思います。

国会論戦を通じて戦争法案の違憲性は明らかとなった

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(写真)講演する志位和夫委員長=23日、外国特派員協会

 戦後、日本の自衛隊は、半世紀余にわたって、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出してきませんでした。ここには憲法9条の偉大な力が働いています。そして、この憲法のもとで、政府が、戦後一貫して、「海外での武力行使は許されない」という憲法解釈をとってきたことも重要な要因として働いています。

 戦争法案は、この国のあり方を根底から覆すものです。それは「海外で戦争する国」づくり、「殺し、殺される国」づくりを進めようというものにほかなりません。私たちは、安倍首相との国会での論戦で、憲法に反する三つの大問題を明らかにしてきました。

 第一は、米国が、世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争にのりだしたさいに、自衛隊がこれまで「戦闘地域」とされてきた地域までいって、弾薬の補給、武器の輸送などのいわゆる「後方支援」=兵站(へいたん)を行うことになるということです。「戦闘地域」での兵站は、相手方から攻撃目標とされ、武力行使に道を開くことになります。

 第二に、PKO(国連平和維持活動)法の改定が、たいへんな曲者(くせもの)であります。PKOとは関係のない活動に参加し、形式上「停戦合意」がされているが、なお戦乱が続いているようなところに、自衛隊を派兵し、治安活動をさせる仕掛けを新たにつくろうとしています。安倍首相は、私の質問にたいして、アフガニスタンに展開し、約3500人もの戦死者を出したISAF(国際治安支援部隊)のような活動への参加を否定しませんでした。戦乱が続いている地域での治安活動は容易に武力行使に転化します。

 第三は、日本がどこからも攻撃されていなくても、集団的自衛権を発動し、米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使にのりだすことになるということです。私たちは、これは、一内閣の専断で、従来の憲法解釈を百八十度転換する立憲主義の破壊であり、憲法9条の破壊であるときびしく批判してきました。

 以上のべた点から、私たちは、この法案の違憲性は明らかだと確信しています。

 そのうえで、今日は、世界から見て、安倍政権が進めている戦争法案が、どんなに異常で危険なのかという角度から、さらにお話をしたいと思います。

「非国際性」――地球の裏側まで派兵を、世界に通用しない理屈で合理化

 世界から見ますと、戦争法案とその推進勢力には、三つの異常と危険があります。

 第一は、「非国際性」です。すなわち、地球の裏側までの自衛隊の派兵をもくろみながら、世界に通用しない理屈でそれを合理化しようとしていることです。

 たとえば、「戦闘地域」での兵站について、安倍政権はどう説明しているか。戦闘部隊に対する補給・輸送などの兵站が、武力行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠の一部であることは、世界の常識であり、軍事の常識です。

 しかし、それを正面から認めてしまうと、その途端にこの法案が憲法違反であることを自ら告白することになってしまいます。そこで政府は、それをごまかすために、世界のどこでも通用しない概念、議論を用いてきました。

「後方支援」「武器の使用」「武力行使との一体化」――すべて世界に通用しない概念

 端的にお話ししましょう。日本政府が使っている言葉で、英語に翻訳できない、概念すらない三つの言葉があります。英語に翻訳できないと私が言って、(同時通訳者の)高松(珠子)さんに訳してもらうのは、たいへんに申し訳ないのですが(笑い)、高松さんは上手にやってくれると思います。(笑い)

 一つは、「後方支援」という言葉です。これは日本政府だけの造語なのです。ご承知のように英語では、「logistics(ロジスティクス)」=「兵站」となります。しかし政府は、決して、「兵站」という言葉を使おうとしません。「兵站」には、「前方」、「後方」という概念は含まれていません。「後方支援」という言葉は、日本の自衛隊が行うのは、あくまでも「後方」で行う「支援」であって、「前方」には行かないというゴマカシの言葉なのです。

 二つ目は、「武器の使用」という概念です。政府は、「(自衛隊は)武器の使用はするが武力の行使にあたらない」(笑い)ということを繰り返します。安倍首相は、「戦闘地域」で自衛隊が兵站を行うさいに、相手方から攻撃されたら「武器の使用」をするということを認めました。しかし、「武力の行使」ではないと(笑い)、かたくなに繰り返すのです。

 そこで私は、外務省に、「『武器の使用』という国際法上の概念があるのですか」とただしました。外務省から返ってきた答えは、「国際法上は、『武器の使用』という概念そのものがございません」というものでした。「武器の使用は武力の行使にあたらない」というのは、世界のどこでも通用しない議論なのです。

 三つ目は、「武力行使との一体化」という概念です。政府は、「他国の武力行使と一体でない後方支援は武力の行使にあたらない」と言っています。そこで私は、先日の党首討論(6月17日)で安倍首相に聞きました。「武力行使と一体でない後方支援という概念が、国際法上あるのですか」。首相は、「国際法上、そういう概念はありません」と答えました。この概念が世界で通用しないことを認めたのです。

 ちなみに、昨年7月に行われた集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の日本政府による英訳(仮訳)で、「武力行使との一体化」をどう訳しているのかを見てみましたら、「Ittaika with the Use of Force」と、「一体化」については何とローマ字を当てていました(笑い)。「一体化」という概念を訳すことは誰にもできないのです。(笑い)

集団的自衛権容認の根拠――「安全保障環境の根本的変容」の実例を示せず

 世界で通用しないという点では、集団的自衛権の行使についての政府見解も同様であります。

 政府は、集団的自衛権発動の要件として、「日本と密接な関係にある他国に対する武力行使が発生し、日本が『存立危機事態』に陥る」ことをあげています。そして、政府は、こうした憲法解釈の変更を行った唯一最大の理由として、「安全保障環境が根本的に変容した」ことをあげています。

 そこで、わが党議員団が国会でただしました。「『安全保障環境が根本的に変容した』というが、他国に対する武力攻撃によって、政府の安保法案が言うような『存立危機事態』なるものに陥った国が、世界に一つでもありますか」。外務大臣が答弁しましたが、「実例をあげるのは困難です」(笑い)というものでした。

 一つも実例があげられない。すなわち憲法解釈を変更した理由――戦争法案の「立法事実」が根底から崩れたというのが、この間の論戦の到達点であります。

 憲法9条のもとでは、もともと自衛隊の海外派兵というのは不可能なのです。それを取り繕おうとするから、政府は、世界のどこにもない架空の概念をつくりだすという矛盾に陥っています。自衛隊の世界的規模での派兵を企てながら、世界のどこにも通用しない詭弁(きべん)でそれを合理化することは、許されるものではありません。

 私は心配になります。地球の裏側で、米軍と自衛隊が共同で軍事行動している。そのときに自衛隊が、「このような後方支援は武力行使と一体化するのでできない」と米軍に言ったとします。しかし米軍のほうは「一体化」という英訳そのものがないのですから(笑い)、理解ができないでしょう。日本政府が弄(ろう)している詭弁は、自衛隊をたいへん困った立場においやることにもなるでしょう。

「対米従属性」――米国の無法な戦争に参戦する危険

 第二は、「対米従属性」――すなわちこの法案を推進している勢力が、異常なアメリカ追随を特徴としているという問題です。

 政府は、集団的自衛権の発動の要件として、「わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生」したことをあげています。私は、この場合、ここでいう「他国への武力攻撃」がいかにして発生したか、ここから問題にしなければならないと考えています。

 すなわち、「他国」が先制攻撃を行い、その結果として戦争状態が生まれたのか――この場合には「他国」は侵略国となります。それとも、「他国」に対する武力攻撃から戦争が開始されたのか――その場合には「他国」は犠牲国となります。私たちは、ここに追及すべき大問題があると考えて、国会で質疑を行ってきました。

 私は、安倍首相に聞きました。「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の『新3要件』を満たしていると政府が判断すれば、集団的自衛権を発動するのですか」。それに対して首相は、「違法な武力行使をした国を日本が自衛権を発動して支援することはない」と答弁しました。

 しかしここで問題となってくるのは、日本政府が、米国の違法な武力行使を「違法」と批判できるかどうかということです。

 戦後、米国は、ベトナム侵略戦争、イラク侵略戦争をはじめ、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。1980年代に米国が行ったグレナダ侵略(83年)、リビア爆撃(86年)、パナマ侵略(89年)に対しては、国連総会が圧倒的多数で米国の武力行使を国連憲章と国際法に違反するものとして非難する決議を採択しています。

 それでは、日本政府が、戦後、米国の武力行使に対して、「国際法違反」として一度でも反対したことがあるか。私が、国会でただしますと、首相は、しぶしぶ「一度もありません」と答弁しました。一度も「ノー」と言ったことはないのです。3度にわたる国連総会での対米非難決議にさいしても、日本政府は、「反対」「棄権」の態度を取り、一度も賛成をしませんでした。

 このような異常なアメリカ追随の国というのは、私は、主要国の中で他に例を見ないと思います。このような政府が、そしてそういう行動に対して今にいたるも反省のない政府が、「違法な武力行使をした国を支援することはない」といって誰が信用できるでしょうか。これまでは米国の要求があっても、「憲法上、集団的自衛権は行使できない」として断ることもできたでしょう。しかしこの法案が成立すれば、そうはいきません。先制攻撃を一貫して国家の基本戦略としている米国に求められるまま、集団的自衛権を発動することになる危険があります。

 世界にも類のない異常なアメリカ言いなりの政府が、集団的自衛権行使を可能とすることの危険は、きわめて深刻だといわざるをえません。

「歴史逆行性」――過去の日本の戦争を反省しない勢力が戦争法案を推進する危険

 第三は、「歴史逆行性」――すなわち過去の日本の戦争を「間違った戦争」と言えない安倍政権が戦争法案を推進する危険であります。

 今年は、戦後70年です。この節目の年に、日本が過去の戦争にどういう基本姿勢をとるかはきわめて重大な問題です。

 私は、5月20日の党首討論で、安倍首相に対して、1945年8月に日本が受諾した「ポツダム宣言」を引用して、「過去の日本の戦争は『間違った戦争』との認識はあるか」とただしました。安倍首相はかたくなに「間違った戦争」と認めることを拒み続けました。くわえてこの党首討論のなかで、安倍首相が「(ポツダム宣言を)まだつまびらかに読んでいない」(笑い)と答弁したことが、内外に衝撃を与えました。

 党首討論の後、安倍政権はこの問題についての答弁書を「閣議決定」しました。そこにはこう書かれています。「首相は当然、ポツダム宣言を読んでいる」(笑い)。「読んでいる」ということを「閣議決定」するというのもおかしな話ですが、「読んでいる」というのだったら、あのときの答弁は何だったのかということになります。

 第2次世界大戦後の国際秩序は、日本とドイツとイタリアが行った戦争は、侵略戦争だったという判定の上に成り立っています。ところが安倍首相は、「侵略戦争」はおろか、「間違った戦争」と認めることすらしないのです。

 日本の過去の戦争への反省のない勢力が、憲法9条を壊して「海外で戦争する国」への道を暴走する。これほどアジアと世界にとって危険なことはないといわなければなりません。

戦争法案阻止へ、国会論戦と国民運動で圧倒的多数派をつくるために力つくす

 昨日(6月22日)、政府・与党は、国会の会期を95日間、9月27日まで、史上最長の延長を強行しました。

 この法案の帰すうがどうなるか。その最大のカギを握っているのは国民の世論です。国民の文字通りの圧倒的多数がこれに反対の意思表示をした場合には、いかに与党が国会で多数を持っていたとしても、容易には強行することはできません。

 私たちは、国会論戦と国民運動の両面で、そうした圧倒的な国民的多数派をつくるために力をつくしたいと決意しています。

 ご清聴、ありがとうございました。(拍手)


参加者との一問一答

アフガン・イラクに派兵された自衛隊員の自殺をどうみるか?

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(写真)講演後、外国特派員から質問を受ける志位和夫委員長(演壇中央)=23日、東京都内

 問い 自衛隊は、これまで海外で一人も殺していないというお話がありましたが、一方で海外派兵から戻った自衛隊員が多数自殺をするという事態が起きています。なぜ高い自殺率になっていると思いますか。

 志位 自衛隊員の自殺者の問題については、私も国会の質疑で取り上げました。アフガニスタン戦争とイラク戦争に派兵された自衛官のうち、帰国後に56人が自ら命を絶っているということが、政府から明らかにされました。

 政府は、「派兵と自殺との因果関係を特定するのは困難な場合が多い」としています。ただNHKは、イラクの現地に派遣された医師が、隊員の精神状態を分析した内部資料を報道しました。内部資料では、睡眠障害や不安など心の不調を訴えた隊員は、どの部隊も1割以上、中には3割を超える部隊もあったとしています。これは非常に深刻な問題だと私は考えています。

 米国の場合は、イラク戦争とアフガン戦争の帰還兵のなかでの自殺が一大社会問題になっています。米国政府によると、1日平均22人、年間8000人もの帰還兵が自殺しているとのことです。戦場で殺されることへの恐怖とともに、戦場で相手の命を奪ったこと――無辜(むこ)の市民を殺してしまったからPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、自ら命を絶つケースも少なくないと伝えられています。戦争でつねに犠牲になるのは未来ある若者であり、こういう負担と犠牲を日本の若者に強いることは許されないと、私は強くいいたいと思います。

首相になったら最初の訪問国にどの国を選ぶか?

 問い 政治家として長年活躍しておられる志位さんが、もし首相になったら、最初にどの国を訪問しますか。

 志位 私たちが政権を担った場合に、最初になるかどうかはわかりませんが、アメリカ合衆国は必ず訪問しなければなりません。

 といいますのは、私たちは、日本国民多数の合意を得て、日米安保条約を廃棄し、それに代えて日米友好条約を締結することを党綱領に明記しています。21世紀の世界を見渡してみた場合に、軍事同盟というのは圧倒的な少数派となっています。米ソ対決時代=20世紀の遺物である軍事同盟はもうやめて、その代わりに真の意味で対等・平等に立った日米友好条約を結びたいというのが、私たちの大方針です。

 共産党というと「反米主義」と考えている人も多いと思いますが、私たちは決して「反米」ではありません。米国の誤った政策にはきびしく反対しますが、「独立宣言」に発する偉大な民主主義の歴史と伝統に対しては深い敬意を持っています。私たちは、太平洋をはさんだ重要な隣国であるアメリカと、真の対等・平等・友好の関係を結びたいと願っています。そうした日米関係の大転換をはかることが、私たちが政権を担った場合の最初の大仕事になるだろうと考えています。

日本共産党の安全保障政策は?野党勢力を一つに束ねる用意はあるか?

 問い 志位委員長の安保法制批判はまさに正鵠を射たもので、共産党の追及が国会でも一番鋭かったと思います。しかし次の選挙でどこに投票するかと考えた場合、たんに政権批判が鋭いということだけでは不十分で、共産党が安全保障、国防についてどう考えているかを国民は知りたい。また、この安全保障政策を含めて共産党が野党勢力を一つに束ねるような用意はあるのでしょうか。

 志位 先にお話ししたように、私たちは日米安保条約を廃棄するという展望を持っていますが、その時に自衛隊も一緒に解消するという立場ではありません。安保条約の廃棄に賛成という方でも、自衛隊は必要だという人もいるでしょう。この二つの問題は、国民的な合意のレベルが違う問題だと考えています。

 私たちは、自衛隊が、憲法9条が保持を禁じた「戦力」にあたることは、明らかだと考えています。しかし、これを一気になくすことはできません。国民の合意を得て、段階的に憲法9条に近づけていくとりくみが必要だと考えています。

 私たちが政権を担った場合に、独立・中立の日本は、非同盟・中立の流れに参加し、憲法9条を生かした平和外交によって、アジアの国ぐにとも、世界のすべての国ぐにとも、対等・平等・互恵の友好関係を築く。こうした努力ともあいまって日本をとりまく国際環境の平和的安定の情勢が成熟する。それを背景として、“自衛隊がなくても日本の安全は大丈夫だ”という圧倒的多数の国民の合意が成熟することを見定めたところで、憲法9条の完全実施の手続きに入ります。すなわち自衛隊解消に向かうというのが私たちのプランです。

 ですから、私たちが政権を担ったとしても、自衛隊との共存の関係が一定期間つづくことになります。そうした過渡的な時期に、万が一、急迫不正の主権侵害など、必要に迫られた場合には、可能なあらゆる手段を用いる、存在している自衛隊を国民の安全のために活用するということも、私たちは党大会の方針で決めています。

 違憲の軍隊と共存するというのは一つの矛盾にほかなりません。しかしこの矛盾をつくりだしたのは自民党政権です。私たちはその矛盾を引き受けながら、国民合意で憲法9条の全面実施に向かうという責任ある方針を示しています。

 野党間の共闘についてのご質問ですが、私たちは、野党間で、条件があれば、さまざまな形で共闘することをこれまでも追求してきました。たとえば昨年の総選挙のさいに、沖縄では、小選挙区の1区、2区、3区、4区のすべてで共闘が成立しました。「新基地建設反対」の一点での共闘が成立し、すべての小選挙区で勝利しました。私たちは、こういう共闘関係を、条件が生まれた時には、大胆に追求します。

 ただ率直にいいますが、野党といっても、国政の基本問題で、政治的・政策的な違いがあまりにも大きいものがたくさんあるのです。国政の基本問題をあいまいにして「選挙共闘」ということになりますと、有権者に責任を負えないということになります。

 そのうえで私は、現局面での野党共闘について一点、強調させていただきたい。現局面では、戦争法案をめぐっての安倍政権の暴走を許さない――この一点での野党間の共闘を最大限追求していきたいというのが、私たちの立場です。昨日(6月22日)は、野党5党の党首会談が開かれました。共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党の5党党首がそろって、「国会会期の大幅延長に反対する」という一点での合意が確認されました。戦争法案をめぐっても、野党の間にはそれぞれ立場の違いもありますが、安倍政権の暴走を許さないという点で、最大限の共闘を私たちは追求していきたいと考えています。

沖縄戦「終結」70年――沖縄の現状をどうみるか?

 問い 今日は(沖縄戦「終結」70年の)6月23日で、沖縄にとって特別な意義のある日です。沖縄の現状について考えを教えてください。

 志位 私は、いま沖縄では、決して後戻りすることのない歴史的な変化、偉大な変化が進行中だと考えています。

 名護市辺野古に米海兵隊の新基地を建設するという動きに対して、文字通り島ぐるみの反対の声が高まりました。とりわけ昨年記録された、一連の勝利は画期的なものとなりました。まず1月の名護市の市長選挙で、新基地建設反対を掲げる稲嶺市長候補が圧勝しました。そして11月の県知事選挙で、新基地建設反対の「オール沖縄」の共同候補として翁長(おなが)知事候補が圧勝しました。12月の総選挙では、すべての小選挙区で新基地建設反対派が勝利しました。

 いま島ぐるみの運動として力強く発展している「基地のない平和な沖縄」をめざす勢力の新しい特徴は、これまでの保守と革新の垣根をこえた共同が広がっているということにあります。新しく県知事になった翁長さんは、かつて自民党沖縄県連の幹事長を務めておられた政治家です。その翁長知事が、いまではすっかり私たちと心の通い合う友人となり、「基地のない平和な沖縄」をめざす同志となっています。

 この島ぐるみの運動は、決して後戻りすることはありません。沖縄県民の長い苦難と苦闘に根差した確固たる土台のうえに発展しているものです。ですから辺野古に新基地をつくることは決してできません。それは不可能だということを日米両政府は知るべきです。

 安倍政権は、「普天間基地移設の代替策を示せ」と言うのですが、翁長知事が言うように、普天間基地というのは沖縄県民がどうぞと差し出したものではないのです。沖縄占領直後に米軍が住民を収容所に強制収容している間に、私有財産の強奪を禁じた戦時国際法を踏みにじって、民有地を強制的に収用した、強奪した土地のうえに基地をつくったのです。ですから翁長知事は言っています。「強奪した土地は沖縄県民に返しなさい」と。

 沖縄県民のこの決意に、本土の私たち全体がしっかり連帯して、「基地のない平和な沖縄」をめざす国民的な大運動をつくりあげていくことが大切です。私たちは、そういう立場で、あらゆる力をつくす決意です。

右寄りの声は聞こえるが、リベラルの声が聞こえないように思うが?

 問い 現在の日本では、憲法や安全保障の問題で、右寄りの声は大きく聞こえますが、いわゆるリベラルの声はほとんど聞こえないように思えます。これはなぜでしょうか。

 志位 私は、そうは考えておりません。むしろ、憲法9条に対して、私たちと立場を異にしてきたさまざまな有識者の方々を含めて、政府の安保法案に対して「憲法違反」との声が広くあがっていることは、きわめて重要です。

 先日の衆院憲法審査会で、参考人として発言した3人の憲法学者は、与党推薦の方も含めて、政府の安保法案を「憲法違反」と断じました。昨日(6月22日)の衆院安保特別委員会の参考人質疑で、歴代の内閣法制局長官が発言しました。そのうち宮崎礼壹(れいいち)氏は、政府の安保法案は「憲法違反」と批判しました。もう一人の阪田雅裕氏も、政府の今回の憲法解釈は「従来の政府の解釈の基本的な論理から逸脱している」と批判しました。自民党の元幹事長など自民党の元幹部の方々からも、今回の集団的自衛権行使容認を認めることはできないとの批判の声があがっています。

 たいへんに感慨深いのは、そういう方々の顔ぶれを見ますと、私がかつて国会やテレビの討論会などで、論敵として論争した相手が、いまは同じ側に立って、戦争法案に反対しているということです。

憲法学者による政権批判をどのように見ているか?

 問い 憲法学者は、安倍政権のもとで憲法解釈の変更が実現してしまえば、将来の政権も解釈を変えてしまうことになり、憲法そのものの価値がそこなわれていると主張していますが、どう考えますか。

 志位 その問題、すなわち立憲主義の破壊という問題は、私たちも、大事な論点として国会で追及しています。多くの憲法学者がのべているように、安倍政権がいま進めていることは、憲法そのものへの信頼を根本から壊す暴挙といわなければなりません。

 集団的自衛権行使を容認する政府の「論立て」というのは、1972年の「政府見解」というのをもとにして、この「政府見解」の「基本的な論理」と「結論」を切り離して、「基本的な論理」は変えていないが、情勢が変わったから、「結論」の部分を変えるというものとなっています。

 しかし1972年の「政府見解」というのは、憲法9条のもとでは集団的自衛権は行使できないという結論を導くために、一体的論理を提起したものでした。それを今になって「基本的な論理」と「結論」は別であり、情勢が変わったから「結論」が変わるのだという。そのような憲法解釈の乱暴極まる変更を行えば、多くの憲法学者が言っているように、憲法に対する信頼性、そして法的な安定性、これらを根本から損なうことになり、立憲主義という国のあり方を根底から否定することになります。

 私が注目して聞いたのは、昨日(6月22日)の参考人質疑での宮崎元内閣法制局長官の発言です。宮崎氏は、そもそも1972年の「政府見解」というのはどうしてつくられたのかという、当時の状況も詳細に説明しました。当時の国会で、集団的自衛権がなぜ行使できないのかということが議論になりました。その議論のなかで、野党の質問者から、政府に対して、なぜ集団的自衛権が行使できないかについて文書で回答を願いたいとの要求があり、それに対する政府の回答として出されたのが、72年の「政府見解」だとの説明でした。72年の「政府見解」から集団的自衛権の「限定的容認」の余地を読み取ろうというのは、「前後の圧倒的な経緯に明らかに反する」――宮崎氏はこのように発言しました。

 1972年の「政府見解」をもとに集団的自衛権行使を容認するという議論が、いかに間違った、いかに途方もない、ゴマカシの議論かという批判については、私は、多くの憲法学者の発言、宮崎元内閣法制局長官などの発言に全面的に同意見です。

中国との衝突に日本が巻き込まれる可能性をどう考えるか?

 問い 地球の裏側で米軍と自衛隊が一緒に武力行使するという話がありましたが、現実的な問題として近隣で問題が発生することもありえるのではありませんか。中国との衝突に日本が巻き込まれるという可能性をどう考えますか。

 志位 たしかに中国と日本の間、あるいは中国と東南アジアの国々との間には、領土をめぐる紛争問題があり、それをどう解決するのかは、地域の平和と安定にとっての大きな問題となっています。

 中国が尖閣諸島の日本領海に公船を入れてくる。こうした物理的な対応を行ってきたことに対して、私たちは中国政府に批判的見解を直接に伝えてきました。また、中国が南シナ海でとっている一方的な行動に対しても批判的立場を表明してきました。

 ただこうした問題は、一方が、物理的な対応、軍事的な対応をやってきた時に、もう一方も、物理的な対応、軍事的な対応をやる、力対力、軍事対軍事のエスカレーションになることが、一番危険だと私たちは考えています。外交的解決に徹するという姿勢を堅持することが何よりも大切です。

 東南アジアの国ぐには、中国との間で、領土に関する紛争問題をエスカレートさせないために、「南シナ海行動宣言」(DOC)というものを結んでいます。そしてDOCを、法的拘束力をもった「南シナ海行動規範」(COC)に発展させるという努力をしています。中国がさまざまな行動をする。それに対して東南アジアの国ぐには、外交的な枠組みの中でそれをエスカレーションさせない。物理的な対応や軍事的な対応にエスカレーションさせない。そういう枠組みをつくることに力をつくしています。

 さらに大きな枠組みで言いますと、東南アジア諸国連合――ASEANは、東南アジア友好協力条約――TACを締結し、それを域外に大きく広げています。あらゆる紛争問題を平和的な話し合いで解決する条約です。

 日本共産党は、東南アジアで力強く発展しているような地域の平和協力の枠組みを、北東アジアにも構築することを目指す、「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。この「構想」は、次の四つの目標と原則に立ったものです。

 第一に、域内の平和ルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する。

 第二に、北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させる。

 第三に、領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。

 第四に、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台となる。

 私たちは、こうした目標と原則に立った「北東アジア平和協力構想」を提唱し、その実現のために、野党ではありますが、関係する諸国の政府や政党などとの対話を重ねてきているところです。

 安倍政権の一番の問題は、熱心なのはもっぱら軍事の話ばかりで、「外交」は形ばかり。こうした包括的な外交ビジョンがまったく見えてこないことです。軍事に対する軍事、その悪循環こそが一番危険です。そうした危険な道をきっぱりしりぞけ、日本国憲法9条を生かした平和の外交戦略を確立することこそ、いま日本に求められていると、私たちは考えています。


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