2015年6月17日(水)
主張
戦争法案の「潮目」
違憲の法案は会期末で廃案に
安倍晋三政権が今国会での成立をねらう戦争法案をめぐり、潮目が変わりつつあるという声が広がっています。憲法学者を先頭にした憲法違反の法案だという批判に政府がまともに答えることができず、国民の間では今国会で成立させるべきではないという声が8割にものぼっているからです。国会周辺でも全国各地でも、戦争法案反対の集会やパレードが繰り返されています。憲法違反の法案を強行するのは、立憲主義にも、民主主義にも反するものです。違憲の戦争法案は、国会の会期延長などせず、廃案にするしかありません。
憲法違反の指摘に答えず
戦争法案はもともと、アメリカの戦争を自衛隊が戦闘地域でも支援する「武力行使との一体化」の点でも、これまで憲法上行使できないとしてきた集団的自衛権を憲法解釈を乱暴に変更して認める点でも、憲法違反が明らかな法案です。憲法は戦争を放棄し、武力の行使を認めていません。戦争法案が憲法に違反することは明らかであり、数多くの憲法学者や法律家、日本弁護士連合会などから批判の声が相次いでいるのは当然です。
4日開かれた衆院の憲法審査会で、与党の推薦した参考人を含む3人の憲法学者がそろって戦争法案は憲法違反と指摘したのは、戦争法案をめぐる潮目の変化につながる出来事でした。
安倍内閣と与党の自民・公明はあわてて、「憲法の番人は最高裁判所であり、憲法学者ではない」(高村正彦自民党副総裁)などといいだし、半世紀以上も前の砂川事件判決(1959年12月)を持ち出してきましたが、判決は日本に駐留する米軍が憲法に違反するかどうかが問われたもので、それ自体についても最高裁は判断せず、集団自衛権については一言もふれていません。国会の特別委員会などでこのことが批判されると、中谷元・防衛相も、政府が集団的自衛権を認めた昨年の閣議決定は「判決そのものを根拠としていない」と認めざるをえませんでした。
昨年の閣議決定はもともと集団的自衛権は行使できないとなっていた72年の政府見解を、「安全保障環境の変化」を口実に結論だけ逆にしたものです。国会では「安保環境の変化」とは何か、いつ変わったかと再三追及されても政府はまともに答えられません。解釈変更に道理がないのは、明白です。
肝心の憲法問題で政府の説明がこんな具合だから、どのマスメディアの世論調査でも戦争法案への支持は広がりません。先週末発表された時事通信の調査でも、戦争法案「廃案」と「今国会にこだわらず慎重に審議」をあわせ8割以上です。集団的自衛権の「限定」行使に賛成している「読売」の調査でも今国会成立に「反対」が59%と前回より増えています。憲法違反のうえ、国民が納得していない法案を強行すべきではありません。
とめよう集まろう国会へ
国会周辺や全国各地では戦争法案反対の行動が日に日に広がり、「60年安保闘争以来」の声さえ上がるほどです。にもかかわらず安倍政権は24日までの国会の会期を大幅に延長し、次の国会に持ち越すのではなく、強行採決も辞さず、なんとしても今国会での成立をと、暴走に拍車をかけています。
「とめよう戦争法、集まろう国会へ」―国民の世論と行動を盛り上げる正念場です。