2015年6月10日(水)
温室ガス最大70%削減
50年まで G7宣言を採択
サミット閉幕
【エルマウ(ドイツ南部)=島崎桂、島田峰隆】当地で開かれていた主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)は8日、2日間の議論をまとめた首脳宣言を採択し、閉幕しました。宣言は気候変動に関し、気温上昇を産業革命前と比べ年平均2度未満に抑えるため温室効果ガスの排出を2050年までに10年比で40〜70%削減する目標を支持するとしました。
同目標は国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示しているもの。年末に国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を開くフランスとサミット主催国ドイツが主導し、気候変動対策に消極的な日本やカナダに働き掛けました。
宣言は、今世紀中に世界経済全体で石油・石炭燃料への依存から脱却する必要性に触れ、気候変動の被害を受けやすい島しょ国で保険加入や警報システム設置を支援することで一致。再生可能エネルギー源が豊富なアフリカでは同エネルギーの開発に取り組む意向を示しました。
過激組織ISなどテロ組織への対応では米国主導の有志連合を支持。テロ組織の資産凍結や資金流入の遮断などの対策を強めるとしています。
国際問題では中国を念頭に「東・南シナ海での緊張への懸念」を表明。「紛争の平和的解決と海洋の自由で合法的な使用の重要性」を強調しました。ウクライナ問題をめぐりG7諸国が科す対ロシア制裁について、同国が2月の停戦合意を履行するまで継続することで合意。ただメルケル独首相は会議後「制裁強化は話し合わなかった」と述べました。
国際経済では、経済成長や雇用増のために女性の起業力強化を強調。環太平洋連携協定(TPP)など自由貿易協定の推進、企業の税逃れ対策などを打ち出しました。
日本の削減目標に批判や失望
【エルマウ=島崎桂、島田峰隆】安倍晋三首相は8日、ドイツ南部エルマウで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議で、日本の温室効果ガス排出量を2030年までに13年比で26%削減する目標案をまとめたことを説明しました。
政府は“国際的に遜色ない目標だ”としていますが、欧州メディアや非政府組織(NGO)から厳しい批判や失望の声が出ています。
仏紙ルモンド(7日付電子版)は、「気候に関する日本の野心不足が失望を買っている」との記事で「経団連に近い経済産業省が、より野心的な削減目標を求めていた環境省に、自らの考えを押し付けた」と論評。日本政府が示した2030年度の電源構成(エネルギーミックス)については「欧州が再生可能エネルギーを重視する一方、日本の基軸電源は石油・石炭となっている」と報じました。
国際援助団体オックスファムは安倍首相の説明に先立ち、日本政府が打ち出した目標について「野心の欠如に深く失望した。全く不十分だ」との声明を発表しました。
特に日本政府が石油・石炭による発電を重視している点に関し、「間違った方向に進んでおり、他のG7諸国と食い違っている」と述べ、より野心的な目標を掲げるよう促しています。