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2015年6月10日(水)

主張

出生率9年ぶり減

若者支える政治へ転換を急げ

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 厚生労働省が発表した2014年の「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯に産む子どもの人数の推計)は前年を0・01ポイント下回る1・42となり、9年ぶりに低下に転じました。昨年生まれた子どもの数は100万3532人で過去最少を更新しました。40年前の半分です。日本社会の少子化・人口減少の加速は重大な問題です。若者が結婚、出産、子育てを希望しながら、それを実現することができない―。このような社会のゆがみがいつまでもただされないことは異常です。政治は事態打開へ真剣に取り組むことが急がれます。

子育て世代に矛盾集中

 厚労省の発表では、合計特殊出生率は05年に過去最低1・26を記録して以降、13年まで横ばいや微増が続いてきました。昨年マイナスになったのは、“第2次ベビーブーム”といわれる1971〜74年に生まれた世代の出産が減少したことに加え、20歳代の出産もさらに減ったためです。

 いまの日本の合計特殊出生率は、人口を維持するために必要とされる2・07には遠く及ばず、フランス1・99、スウェーデン1・89の水準にも届いていません。日本が世界でも、子どもを産み、育てることがきわめて困難な国であることを浮き彫りにしています。

 結婚・出産は個人の選択の問題であり、その権利は尊重されなければなりません。一方、政府の意識調査では子ども2人が欲しいと答えた夫婦は約50%、3人と答えた夫婦は約40%にのぼっています。問題は、若者・子育て世代の希望を妨げているさまざまな「壁」が一向に打開されていないことです。

 05年に合計特殊出生率1・26を記録した翌年、政府の「少子化社会白書」は「少子化の原因」を次のように指摘しました。「結婚や結婚後の生活の資金がないこと、雇用が不安定であるため将来の生活設計が立てられないこと、結婚すると仕事と家庭・育児の両立が困難となること」―。さらに育児や教育にかかる費用の重さなど多くの課題も列挙しました。それから10年近くたつのに、数々の課題は改善に向かうどころか、ますます深刻化するばかりです。

 不安定で低賃金の非正規雇用の拡大などにより、20〜30代の労働者の年収は10年間で大きく減少しました。年収300万円未満の男性の既婚率は、年収300万〜400万円の男性の既婚率の約3分の1です。正規雇用の労働者も、家庭を顧みる余裕もない異常な長時間労働まで強いられています。

 妊娠・出産による退職・職場での嫌がらせも後を絶ちません。保育所不足によって、安心できる子どもの預け先を血眼になって探す「保活」を強いる社会で子育てに希望がもてるはずがありません。女性や若者がまともな住まいを確保できない貧困の広がりは、一刻も放置することはできません。

雇用破壊は最悪の逆行

 安倍晋三政権が強行しようとしている労働者派遣法改悪案や「残業代ゼロ」法案は、若者の「使い捨て」を加速する最悪の逆行です。

 日本の少子化は、大企業の大もうけのために若者たちを犠牲にしてきた政治・経済の行き詰まりがもたらしているものです。大企業優先政治のゆがみをただし、若者が結婚・出産・子育てに希望が持てる政治への転換が必要です。


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