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2015年6月7日(日)

“合意か漂流か”の岐路 TPP交渉きっぱり断念を

日米推進勢力の思惑通り進まず

日本共産党農林・漁民局長 紙智子参院議員に聞く

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 環太平洋連携協定(TPP)交渉の現局面や、国会審議がヤマ場を迎える農業協同組合(農協)「改革」関連法案について、日本共産党農林・漁民局長の紙智子参議院議員に聞きました。

 (北川俊文)


各国の運動が“妥協”阻む

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(写真)紙智子参議院議員

 ―TPP交渉は今どこまできていますか。

 12カ国のTPP交渉は、米国で次期大統領候補選びが本格化する今夏までに「合意」しなければ、「長期漂流」が避けられないといわれてきました。それ以降は、オバマ政権が弱体化し、本格的な外交交渉ができなくなるからです。

 日米両政府や交渉推進勢力は、5月末には参加国の閣僚会合で「大枠合意」を目指すとして交渉を続けてきましたが、その見通しが立たず、閣僚会合を先送りせざるをえませんでした。

 その最大の要因とされるのが、米国の議会で、通商交渉で大統領に強い権限を与える貿易促進権限(TPA)法の成立が見通せないことです。これが成立しなければ、交渉参加国政府はオバマ政権の交渉力を信頼できず、「譲歩」や「合意」が困難だとされます。紆(う)余(よ)曲折をへて、5月下旬にかろうじて上院を通過しましたが、下院の審議は6月にずれ込み、議会内での複雑な力関係などの反映で難航するとみられています。TPP交渉が「合意」できるかどうか、まさにギリギリの局面になっています。

 ―TPP推進勢力の思惑通りに交渉が進んでいない背景に、何があるのでしょう。

 TPPは、多国籍企業の利益を第一に考え、各国の条件の違いを無視して、関税全廃を原則とし、経済や暮らしに関わる多くの制度や仕組みについても米国流のルールを押し付けるものです。国民の暮らしや生命より企業利益を優先するTPPの本質が次第に知られるようになり、交渉の異常な秘密主義も相まって、参加国内でTPP反対の声が大きく広がりました。

 米国内でも、有力な労働組合や市民団体が、雇用や暮らしを脅かすとして、TPPやTPAに反対する運動を今年に入って急速に広げています。ニューヨークなど15自治体が反対決議を上げるに至っています。

 交渉の現状は、日米2国間では、農産物と自動車をめぐる協議が続き、12カ国の協議では、知的財産権や国有企業の分野などで日米と途上国が対立しているとされます。そこには、日米の多国籍大企業の身勝手な利益と各国国民との矛盾も大きく反映しています。

 ですから、米国を含む各国の運動の広がりが、参加国政府の“安易な妥協”を阻み、米議会でもTPA法の成立を不透明にしている大きな力になっているのは間違いありません。日本の運動もその一翼を担っているのは明らかでしょう。

譲歩を重ねる日本政府

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(写真)労働総同盟産別会議(AFL・CIO)本部前でTPPとTPAに反対する人々=4月20日、米ワシントン(洞口昇幸撮影)

 ―安倍晋三政権は早期妥結に突き進んでいますが。

 安倍首相は4月末の日米首脳会談で、この間の日米交渉に「大きな進展があった」として、日米が早期妥結に向けて指導性を発揮することを約束しました。「守秘契約」を盾に「進展」の内容を明らかにしませんが、報道では、農産物協議で米輸入特別枠の設置、牛肉・豚肉の関税引き下げなど、日本が大幅な譲歩案を提示したとされています。これらは、「重要農産物は除外または再協議」とするよう求めた国会決議や、与党自民党の自らの公約を完全にほごにするもので、農業関係者などに怒りと不安が広がっています。

 甘利明TPP担当相は、米国でTPA法が成立すれば、交渉が一気に進むかのようにいい、TPA法の早期成立への期待を再三表明しています。しかし、今、提出されているTPA法案は、米国の大企業や業界の身勝手な要求をTPPに盛り込むよう米国政府に求めるものです。それを前提にTPP交渉が妥結するとなれば、わが国は米国側の要求を丸のみする以外にありえないでしょう。

 安倍政権のTPP暴走は、国民への重大な背信行為であり、国民や国の将来に全く責任を負わない亡国の道であることは、いよいよ明白です。

幅広い団体・個人が反対

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(写真)TPP「合意」は許さないと訴える人たち=5月20日、東京都千代田区

 ―TPPストップの運動は正念場ですね。

 TPP問題が提起されて以来4年半、TPP反対のたたかいがかつてない規模で全国に広がりました。安倍政権が交渉に参加して以降は、国会決議や公約に違反し、秘密交渉で譲歩を重ねる政府に厳しい批判が広がり、運動が粘り強く発展してきました。

 最近でも、JAグループが関連団体と共同して全国集会(5月19日)や各地の決起集会をあいついで開いています。北海道医師会はTPPと医療を考える道民集会(同30日)を開催しています。

 大学教員や弁護士、主婦連の代表3氏が呼びかけたTPPフォーラム(同19日)、市民団体などによるTPP緊急国会行動(同20日)など幅広い団体・個人による多彩な行動も連続しています。こうした持続的なたたかいが、「こんどこそ妥結か」という重大局面を何度も乗り越える力になってきたことは間違いありません。

 この6月、米国でのTPA法案の審議をにらみながら、日米協議や閣僚会合の設定など「大筋合意」に向けた動きが激しくなるでしょう。それだけに「合意」を断念させ、「長期漂流」に追い込み、最終的に挫折させるたたかいがいよいよ重要になっています。

 全国食健連は今月中旬にTPPストップの全国一斉宣伝行動を呼びかけています。

農協「改革」阻む共同広く

 ―農協「改革」関連法案の国会審議もヤマ場を迎えますね。

 政府・与党は6月中旬には衆議院を通過させ、今国会での成立をめざすとして審議を急いでいます。

 この法案は、戦後農政の基本となってきた農協、農業委員会、農地制度を根本から覆し、家族農業中心から企業が支配できる農業・農村へつくり変えようとするものです。

 農協「改革」は、中央会制度の廃止や全農の株式会社化、単位農協の事業分割などを盛り込み、農協の実質的な解体につながるものです。農業委員会法「改正」も、委員公選制を廃止など「農民の代表」機関としての性格を奪うものです。

 いずれも、農業や農村の現場から出された「改正」ではなく、財界の要求を踏まえて安倍政権が上から押し付けたものです。先日の衆議院での参考人質疑でも、参考人の多くが実態とかけ離れた「改革」だと口々に批判しましたが、現場の関係者の間でも、不安や不信、怒りが渦巻いています。この現場の思い、地方の声を国会に集中し、法案の廃案をめざす運動を盛り上げることが急務ですね。

 日本共産党は、「戦争法案」阻止など安倍政権を追い詰める国民的課題と一体で、TPPや農協「改革」関連法案に対する国会での徹底した追及、各地での宣伝、関連団体との対話・懇談・共同を強め、TPPや農協「改革」をきっぱりと断念に追い込む決意です。


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