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2015年6月3日(水)

派遣法改悪案って?

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 国会審議が緊迫している労働者派遣法の「一部改正」案は、企業が正社員を減らして、安上がりな派遣労働を制限なしに利用できるようにするたいへんな悪法です。問題点をQ&Aでみてみます。


 Q 政府は今回の法案について、正社員になりやすいようにするものだと説明しています。違うのですか。

写真

(写真)「労働者派遣法の大改悪はやめよ」と訴える雇用共同アクションの参加者=5月22日、衆院第2議員会館

正社員の道閉ざす

  違います。むしろ逆に正社員への道を閉ざすものです。

 労働者派遣には、正社員を派遣に置き換えてはならない、派遣は「臨時的・一時的」利用に限るという原則があります。このため派遣の利用期間を同じ業務で原則1年、最長3年と制限しています。

 この期間を超えてなお存続する業務は「臨時的・一時的」とはいえず恒常的な業務だから、正社員にしなさいということです。

 現行法は、通算3年を過ぎたら派遣労働者に直接雇用を申し込むよう派遣先企業に義務付けています。違反した場合、派遣労働者を正社員として雇用したとみなすという制度が10月1日からスタートします。

 ところが今回の法案は、この原則を変えるものです。3年を上限とする期間制限を超えて派遣を利用する方法を新たに設けます。

 まず派遣先企業が労働組合の意見を聞けば3年を超えて延長できることにします。意見を聞くだけで同意を得る必要はありません。もうひとつは、人を変えれば同じ部署での派遣を延長できるようにします。

 こういう方法で期間制限の歯止めを外し、派遣先企業がいつまでも派遣を利用できるようにします。派遣労働者の正社員への道は閉ざされてしまいます。

 Q 政府は、派遣労働者のキャリアアップや雇用安定の措置を数々そろえて、派遣で働く人の立場を強化する法案だと説明しています。本当ですか。

派遣を固定化する

 A 実効性がないものばかりです。

 たとえば労働者のキャリアアップのための計画的な教育訓練を新たに派遣会社に義務付けます。能力がアップすれば正社員への道が開かれるというのですが、絵空事です。

 いま計画的な教育訓練ができるような施設、システム、財力をもっている派遣会社はほとんどありません。労働者が希望する能力アップができる保証はありません。

 ましてや派遣会社が、よその企業の正社員にするために労働者を訓練することなどありえません。訓練に金をかけるとすれば、それは「正社員よりコストが安く優秀なわが社の派遣を使いませんか」と売り込むためです。

 そういう営業をうけて、安くて優秀で無期限に使える派遣なら、正社員を切って派遣にしたほうが得だと考える企業が増えることが予想されます。派遣労働者の能力アップは、派遣として働く能力アップで、派遣の固定化にほかなりません。

 派遣先企業の正社員との均等待遇はありません。正社員に比べて5〜7割の低賃金が温存されるということです。ヨーロッパや韓国などで当たり前になっている肝心な規制が無視されています。

 Q そもそも派遣労働を法律で規制する必要があるのは。

ピンハネ業が横行

 A 派遣という働き方が特別だからです。

 労働者は会社に雇われて、その会社の社員として働くのが普通です。「直接雇用」といいます。派遣は、雇われた会社から別の会社に派遣されて働きます。雇い主と勤務先が異なる「間接雇用」という働き方です。

 「間接雇用」は、人間を貸し借りして代金をピンハネする「人貸し業」が介在するという特徴があります。したがってまともに賃金を払わないなど労働者を人間として扱わない悪徳業者が横行しないように規制が必要なのです。

 日本の法律では、「人貸し業」を「労働者供給事業」として禁止しています(職業安定法44条)。また「他人の就業に介入して利益を得てはならない」として中間搾取することを禁止しています(労働基準法6条)。

 ところが財界の強い要求をうけて、一定の基準を定めて「例外」として「人貸し業」が合法化されました。それが1985年にできた労働者派遣法です。

 その基準が、正社員を派遣に置き換えてはならないというものです。今回の法案は、労働者派遣法のもっとも大事な基準を投げ捨てて、正社員を派遣に置き換える自由を企業に与えるものです。廃案にするべきです。


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