2015年6月1日(月)
労働者派遣法改悪案
正社員化の道閉ざす労働者への背信行為
衆院厚生労働委員会で審議されている労働者派遣法改悪案。「正社員化を進める」(安倍首相)どころか、正社員化の道を閉ざし、「生涯ハケン」を押し付けるものであることがくっきりと浮かび上がっています。
現行法の骨抜き
現行法では、専門業務をのぞいて「原則1年、最長3年」の期間制限があり、業務を継続したければ派遣労働者を直接雇用しなければなりません。派遣可能期間を超えて派遣労働者を使用するときも直接雇用を申し込まなければなりません。
さらに、派遣先が違法派遣を行った場合、派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなすと定めており、10月1日から施行です。
不十分ながらも現行法には、直接雇用や正社員化につながる規定がありました。
ところが改悪案は、こうした規定を廃止・骨抜きにします。
業務単位の期間制限を廃止し、過半数労働組合か、労働者の過半数代表の意見を聴取しさえすれば、派遣受け入れを永続的に継続できるようにします。
個人の派遣労働者には3年の上限を設けますが、派遣先は人を入れ替えれば永続的に受け入れることができます。期限がきた派遣労働者についても、派遣先(課など)を変えれば引き続き使用することができます。
さらに、無期雇用となっている派遣労働者には期間制限をいっさい適用しません。どこをみても、「生涯ハケン」を進めるものであって、直接雇用や正社員化を進めるものでないことは明白です。
「みなし」無力化
しかも改悪案では、「みなし雇用」となる対象から、「業務単位の期間制限違反」を削除します。派遣業務の規制を外すからです。
しかし、期間制限違反は、専門業務で多発している違反です。これを削除すれば、「みなし制度」はほとんど発動されなくなります。
実際、厚労省は、「経済界等の懸念」を理由に、「みなし制度」施行前に改悪案を成立させるよう議員らに説得工作をしていたのです。
塩崎恭久厚労相は、現行規定を削除したことについて、「みなし制度で労働者保護をはかる」と言い訳。これに対して日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は、改悪案によって、「みなし制度」の効力が限られると指摘しました。
「みなし制度」は、2008年の“派遣切り”に対する労働者のたたかいと世論に押されて2012年に導入されたものです。しかし、企業側の抵抗で施行が3年半も先延ばしにされました。今度は施行直前になって、なきものにしようというのです。「労働者に対する背信行為」(参考人で意見陳述した鷲見賢一郎弁護士)であり、改悪案は廃止する以外にありません。(深山直人)