2015年6月1日(月)
きょうの潮流
「自分を世界一の力を持つ男と考えている。その手には世界最大の宗教を握っているからだ」。国際サッカー連盟(FIFA)のアベランジェ前会長の言葉です▼「世界最大の宗教」とは、もちろんサッカーのこと。FIFAの加盟国・地域は209。これは国連の193カ国を上回ります。巨大な組織の不遜な姿が見え隠れします▼FIFAの長年の疑惑に捜査のメスが入りました。副会長ら幹部9人を含む14人が、贈収賄などの罪で米司法省に起訴されています。ワールドカップの開催地選定に投票権を持つ理事25人のうち、投票の見返りに金銭を要求したなどの疑惑です。それにしても約185億円という賄賂には驚くばかりです▼疑惑発覚後の5月29日、ブラッター会長が5選を果たしました。いったい自浄能力があるのかとみるむきもあります。しかし、サッカーを利用し私腹を肥やす勢力には、それを愛する人々の反撃が必ずあるはずです。選挙では欧州勢など3分の1近い“反対票”も投じられました▼ドイツの名選手ベッケンバウアー氏はかつて語っていました。「フットボールは、公平で非政治的で普遍である。世界の人々を毎日のように結びつけている。国際組織としてFIFAは人々を一つにする重要な役割を担っている」▼残念ながら、いまはそれを果たす倫理的な規範を欠いています。スポーツ団体にとって公平、公正は命綱です。不正のない、透明性のある組織をどうつくるか。危機を再生のキックオフにしなくては。