2015年5月27日(水)
志位委員長の代表質問 衆院本会議
日本共産党の志位和夫委員長が26日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
私は、日本共産党を代表して、安倍政権が、「平和安全法制」の名で提出した一連の法案について質問します。
安倍政権は、この法案を「平和安全」と銘打っていますが、わが党は、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる戦争法案というのが正体だと考えています。
多くの問題点がありますが、憲法9条を破壊する三つの大問題について質問します。
「戦闘地域」での軍事支援――「殺し、殺される」危険が決定的に高まる
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第一は、海外派兵の恒久法の新設、周辺事態法改定によって、米国が、世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争にのりだしたさいに、自衛隊がこれまで「戦闘地域」とされてきた場所にまで行って、弾薬の補給、武器の輸送などの軍事支援――「後方支援」を行うようになるということです。
これまでのテロ特措法、イラク特措法などでは、自衛隊が活動できる場所は「非戦闘地域」に限定されていました。ところが政府提出法案では、「非戦闘地域」という歯止めを外し、「戦闘現場」――その瞬間に戦闘行為が行われている場所でなければ、自衛隊の活動期間中に戦闘行為が行われる可能性がある場所――これまで「戦闘地域」とされてきた場所であっても、自衛隊の軍事支援ができるとしています。総理に5点質問します。
一つ。戦闘行為が行われる可能性がある場所まで自衛隊が行くということは、自衛隊自身が相手方から攻撃される可能性があるということになる。それをお認めになりますね。
二つ。自衛隊自身が攻撃されたらどうするのか。必要な場合には、武器を使用することになる。それをお認めになりますね。
三つ。自衛隊が武器の使用をすれば、相手方はさらに攻撃する。そうなれば、自衛隊は応戦し、戦闘になるではありませんか。総理は、昨年5月の予算委員会の私の質問に対して、「イラク戦争やアフガニスタン戦争のような場合に、武力行使を目的にして戦闘に参加することは決してない」と繰り返しました。しかし、たとえ武力行使を目的にしていなくても、補給や輸送などの「後方支援」が目的であったとしても、これまで「戦闘地域」とされてきた場所まで行って活動すれば、結果として自衛隊が戦闘を行うことになるではありませんか。これは憲法9条が禁止した武力の行使そのものではありませんか。答弁を願いたい。
四つ。自衛隊のイラク派兵は、「非戦闘地域」への派兵を建前としていました。それでも、サマワの陸上自衛隊の宿営地にはロケット弾などによる攻撃が少なくとも14回、23発に及び、うち4回、4発のロケット弾は宿営地の敷地内に落下しました。航空自衛隊は、バグダッドなどへの空輸活動を行いましたが、バグダッド上空に来ると、携帯ミサイルに狙われていることを示す赤ランプが点灯し、警報が鳴る事態が頻発し、命がけの回避行動が必要でした。総理、イラク派兵は、「非戦闘地域」が建前であっても、攻撃を受け、戦闘に至る一歩手前だったという認識はありますか。「非戦闘地域」という歯止めを外し、これまで政府が「戦闘地域」としてきた場所まで行って活動すれば、自衛隊が現実に攻撃され、「殺し、殺される」危険が決定的に高まることは明らかではありませんか。
五つ。そもそも政府の法案で、「後方支援」と呼んでいる活動は、国際的には兵たん(ロジスティクス)と呼ばれている活動です。自衛隊の行う兵たんが、戦時国際法上、軍事攻撃の目標とされることは、1999年の周辺事態法案の質疑で、私の質問に対して政府が明確に認めたことです。兵たんは、戦争行為の不可欠の一部であり、武力行使と一体不可分のものであり、だから軍事攻撃の目標とされる。これは、世界の常識であり、軍事の常識ではありませんか。政府の言う「武力行使と一体でない後方支援」など、世界ではおよそ通用するものではないと考えますが、いかがですか。
以上、5点について、総理の明確な答弁を求めます。
PKO法改定の危険――戦乱が続いている地域の治安維持活動
第二に、PKO法改定法案にも、重大な問題点があります。国連が統括しない活動にも自衛隊を参加させ、形式上「停戦合意」がされているが、戦乱が続いている地域に、自衛隊を派兵して、治安維持活動などに取り組むとしています。武器の使用も、自己保存のためのものだけでなく、任務遂行のためのものも認めるなど、格段に拡大しようとしています。
総理に質問します。こうした法改定がなされれば、2001年から2014年までの期間、アフガニスタンに展開した国際治安支援部隊(ISAF)のような活動に自衛隊を参加させ、治安維持活動などに取り組むことが可能になるのではありませんか。ISAFは、治安維持を主任務にしていましたが、米軍主導の「対テロ」掃討作戦と混然一体となり、13年間で約3500人が戦死しています。こうした活動に、自衛隊を参加させるとなれば、ここでも、自衛隊が「殺し、殺される」戦闘に参加することになるではありませんか。憲法9条が禁止した武力の行使を行うことになるではありませんか。明確な答弁を求めます。
集団的自衛権――米国の戦争に対する基本姿勢を問う
第三は、これまでの政府の憲法解釈を根底から覆し、武力攻撃事態法などの改定によって、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、アメリカの戦争に自衛隊が参戦し、海外で武力の行使を行うことになることです。
総理に質問します。
一つ。私は、2月の本会議の代表質問で、「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の新3要件を満たしていると判断すれば、集団的自衛権を発動するのか」と質問しました。総理は答弁で、「個別具体的な状況に照らして、総合的、客観的に判断する」というだけで発動を否定しませんでした。重ねて伺います。米国が先制攻撃を行った場合でも、発動することがありうるのか否か。先制攻撃は、国際法違反の侵略行為です。先制攻撃の戦争であっても集団的自衛権を発動するとなれば、集団的自衛でなく集団的侵略そのものではありませんか。
二つ。日本が国連に加盟してから今日まで、日本政府が米国による武力行使に対して、国際法上違法な武力行使として反対したことが一度でもありますか。私は、1997年の日米ガイドライン改定の質疑で、同じ質問を、当時の橋本首相に行ったことがありますが、首相の答弁ははっきり「一度も反対したことはない」というものでした。今日に至るまで一度もないはずです。こんな異常な米国追随の国は、世界の主要国でも日本だけです。このような政府が、米国から「武力攻撃されたから支援してくれ」「支援しないと日本の存立にかかわる」と言われて、どうして自主的な判断ができますか。米国が無法な戦争にのりだしても、言われるままに集団的自衛権を発動することになることは、明らかではありませんか。
憲法を幾重にもじゅうりんする戦後最悪の戦争法案は、徹底審議のうえ廃案にするしかありません。そのことを強く求めて質問を終わります。