2015年5月23日(土)
きょうの潮流
南米ウルグアイの第40代大統領を務めたホセ・ムヒカさんは“世界で一番貧しい大統領”と呼ばれました。給料の大半を貧しい人のために寄付。公邸には住まず、郊外の農場で愛妻と質素に暮らしています▼「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」。物質的な豊かさだけが人間の幸せか。3年前の地球サミットで、彼はそう問いかけました▼「目の前にある危機は私たちの生き方の危機」「社会の発展が幸福をそこなうものであってはならない」。世界の国や組織の代表を前に、人類の幸福とは何かを説いた演説は人びとの心をつかみ、日本でも絵本になりました▼温暖化をはじめ、地球環境の悪化や異常気象が叫ばれているいま、国際社会の共同したとりくみが欠かせません。温室効果ガスの削減目標を各国が示して抑えようとしているのも一環。手を携えて実行しなければ、人類の未来が危うい▼これまでの価値観にとらわれず、危機感を共有し、共通の課題に向かっていく。そんなときに背を向けているのが、情けないことにわが日本。安倍政権は温室ガスの削減目標をごまかし、原発の再稼働にこだわり、自然エネルギーの導入にも後ろ向きです▼今年3月、大気中の二酸化炭素の平均濃度が観測史上最も高くなりました。所得の格差は世界中でひろがっています。自国だけの利益や、ひと握りの人たちの裕福さだけを追い求める勢力とは決別しなければなりません。