2015年5月23日(土)
「核兵器禁止条約」を削除
NPT最終文書案 「被爆地訪問」も復活せず
「前回より後退」 非核保有国反発
【ニューヨーク=島田峰隆】国連本部で開催中の核不拡散条約(NPT)再検討会議のフェルキ議長は22日未明、最終文書案を各国に配布しました。同日午後(日本時間23日未明)に最後の全体総会を開き、最終文書案の採決を行う予定。最終文書案からは、核兵器禁止条約への言及が削除されるなど、全体として表現が大きく弱められています。
最終文書案には非核保有国から強い不満が出ています。最終文書の採択は全会一致が原則のため、会議が成功するかどうか予断を許しません。
最終文書案は、核軍備の縮小・撤廃へ誠実な交渉をするとした第6条の効果的措置について、今年の国連総会で作業部会をつくり、「法的規定を含めて確認し詳細を詰める」としています。
15日に示された案にあった、非同盟諸国が国連総会決議で提案している核兵器禁止条約の言及は削除されています。同決議は別の段落で言及されていますが、15日の案で「決議を歓迎する」とされていたのが「留意する」に弱められています。
核兵器使用の非人道性に関して15日の案は、今回の会議期間中にオーストリアが159カ国を代表して発表した共同声明を「歓迎する」としていました。
最終案は「オーストリアによる共同声明を含む、さまざまな共同声明に留意する」に後退。過去3回開かれた非人道性に関する国際会議は「非核保有国と市民社会の知見」を豊かにしたとして、核保有国を含まない記述に変更されています。
世界の指導者に被爆地訪問を呼び掛けた部分も復活しませんでした。代わりに「第2次世界大戦の悲惨な荒廃の終結から70年にあたり…人道的影響を知るために核兵器の影響を受けた人々や地域の経験を直接共有する」ことを含めた努力を「奨励する」となっています。
ある非同盟国の外交官は「前回の最終文書より後退した内容だ。この文書案を採択しても役に立たず、悪いメッセージを送るだけだ」と話しています。