2015年5月18日(月)
主張
東日本大震災復興
地元が望まぬ打ち切りやめよ
東日本大震災の復興にあたる復興庁が、2015年度で5年間の「集中復興期間」が終わる全額国費の復興事業について、地元負担の導入や一般公共事業への移行、一部は打ち切りの方針を打ち出し、地元の反発を呼んでいます。東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島など被災地の復興は道半ばで、多くの被災者はいまだに元の暮らしを取り戻せていません。竹下亘復興相は、地元自治体などと協議の上、6月末までに決定したいとしていますが、地元の同意のないまま、地元に負担を押し付け、復興事業を打ち切るのは許されません。
支援なしには復興進まぬ
2万人近い人たちが亡くなったり行方不明になったりし、被災から4年以上たった今も20万人を超す人びとが避難生活を送っている東日本大震災の復興が、自治体や住民まかせで進まないことは明らかです。仮設住宅から復興公営住宅に移り、造成された高台での住宅建設が始まっても、それだけでは生業(なりわい)を取り戻し元の生活に戻ったとはいえません。「集中復興期間」が終わったあとも、息の長い国の支援が求められます。
とりわけ東京電力福島第1原発事故でいまだ立ち入りが制限される地域が残り、10万人を超す人たちの避難生活が続く福島県では本格的な復興はまさにこれからです。「集中復興期間」の終了どころか、延期・充実こそが求められます。
復興庁が示した方針は、16年度以降の5年間を「復興・創生期間」とし、復興住宅の建設や高台移転はこれまで同様、全額国費で事業を進めるものの、新規の防潮堤建設などは一部を自治体の負担とし、内陸部の道路建設などは一般会計に移し自治体に負担を求めるというものです。被災地の自治体はただでさえ財政力が十分でなく、人口の流出や産業の衰退が続いていることから、一部とはいえ自治体負担の導入は、事業そのものの存続に関わりかねません。
重大なのは、復興庁が県外自主避難者への情報支援や緊急雇用創出事業、福島県での再生可能エネルギー導入促進事業など10の事業について、国事業の継続でも地元負担の導入でもなく、15年度で打ち切る方針を明らかにしたことです。これらの事業が打ち切られれば、県外への自主避難者に情報を届けることも、震災で仕事を失った被災者に仮設住宅の見回りなどの仕事を提供することもできなくなります。
なかでも福島での再生可能エネルギー導入促進事業は、原発事故で大きな被害を受け、廃炉が決まった福島第1原発だけでなく、停止中の第2原発を含め、すべての原発をなくすよう求めている福島県にとって復興の要にもなる事業です。問答無用でそれまで打ち切ろうという復興庁の姿勢に反発が広がるのは当然です。
災害復興は国の責任
地震や津波による被害は、たまたまそこに住んでいたというだけで、住民に責任が押し付けられるものではありません。国際的にも被災者を保護し、援助を与える「第一義的な義務と責任は国家当局にある」というのが原則です。
実情に合わなくなった事業の見直しは当然としても、住民が同意しない地元負担や復興事業の中止はやめるべきです。復興庁は被災者の声に耳を傾けるべきです。