2015年5月15日(金)
きょうの潮流
イラク戦争やアフガニスタン戦争から帰還した米兵は約280万人ともいわれます。退役軍人でつくる団体のアンケート調査によると、53%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患に苦しんでいます▼自殺を考えたことがある人は31%。自殺した帰還兵の知人がいる人は40%にも。米国では深刻な社会問題になっています▼そんな元兵士と家族らの姿を追ったノンフィクション『帰還兵はなぜ自殺するのか』(亜紀書房)が話題です。著者は、米紙ワシントン・ポスト記者を23年間つとめ、ピュリツァー賞の受賞経験を持つジャーナリストです▼描かれている一人ひとりの体験が壮絶です。ある帰還兵は帰国後、イラクで3歳くらいの少女を殺したことを何度も家族に告白。悪夢で目が覚めると、「そこらじゅうに子どもたちの姿が見える」と。結局、彼は自ら命を絶ちました。1歳の娘を残して▼イラク戦争は「イラクの大量破壊兵器保有」という大ウソで当時のブッシュ米政権が始めました。侵略されたイラク国民とともに、戦争に駆り出された米国の若者の心身も壊しました。作家の保阪正康氏はこう評しています。「今の日本でもっとも読まれるべき書」と▼安倍政権は、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる戦争法案を閣議決定しました。先立つ与党の最終合意(11日)を米軍準機関紙「星条旗」は伝えています。「この国の平和主義政策の重大転換」。そんな転換を許してはなりません。たたかいは、これからです。