2015年5月13日(水)
きょうの潮流
6月末からドイツで開かれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会で、日本政府が申請した「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が認められる見通しだといいます。福岡県の八幡製鉄所など、8県の23施設で構成される「遺産」です▼これに対して韓国が猛反発しています。韓国国会の外交統一委員会が可決した決議は、「日本政府の朝鮮人強制徴用施設のユネスコ世界文化遺産登録推進を糾弾する」と手厳しい。23施設のうち7施設に朝鮮人5万7900人が強制動員された、というのが韓国政府の主張です▼日韓議員連盟と韓日議員連盟の合同幹事会が11日にソウルで開かれ、日本側の河村建夫幹事長が韓国側に理解を求めたといいます。その発言に気になる一言がありました。「非西洋人では初めて近代化したということをユネスコが認めた」▼世界遺産登録に“国のプライド”が付きまとうのは仕方がないかもしれません。しかし、河村氏の発言には、日本人以外の非西洋人に対する優越感が漂います▼世界遺産の対象は「全人類のための世界の遺産の一部として保存しなければならないもの」。この精神を損なわない登録であってほしい▼日本政府は「遺産の対象は1850年代から1910年まで」だから、朝鮮半島の植民地支配は無関係と言います。しかし、“植民地支配の歴史を隠した”と受け取られたら、せっかくの世界遺産に傷が付きます。歴史に誠実に向き合う姿勢こそ、ユネスコの精神に合うはずです。