2015年5月11日(月)
英総選挙 保守党37%得票で過半数
緊縮策継続に不安広がる
小選挙区制に不満
【ロンドン=島崎桂】7日投票の英総選挙(下院650議席、任期5年)は、与党・保守党による単独での過半数議席獲得で幕を閉じました。選挙結果を受け、国民の間では既に、保守党政権が課してきた緊縮政策継続への不安や、民意をゆがめる選挙制度への不満が広がっています。
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保守党勝利の要因としては、欧州債務危機への対応が評価されたとの見方が一般的です。フランスや南欧諸国など他の欧州諸国では、今も高失業率や低成長が続く中、英国は比較的安定した経済回復・成長を続けています。
5年間の悲劇
ただ、保守党政権が財政再建策として課した増税や社会保障の削減、公的医療の民営化への不満は根強く、英紙デーリー・ミラー(9日付)は、保守党の勝利が「貧困層や病人、障害者に、さらに5年間の悲劇をもたらす」と論じました。
緊縮策と並び、国民の間では選挙制度への不満も高まっています。英国は総選挙で完全小選挙区制を採用しており、保守党は約37%の得票で過半数議席を獲得。得票率約30%の労働党に99議席の差をつけたほか、約13%を得票した英独立党(UKIP)は1議席にとどまりました。
ロンドンでは9日、一部市民が小選挙区制の廃止と比例代表制の導入を求め、首相官邸のあるダウニング街をデモ行進。「63%(の有権者)は保守党を拒否した」として、選挙制度の矛盾を指弾しました。
労働党に投票したというシスター・ルースさん(74)は、「保守党は支持率とかけ離れた議席を獲得し、今後は単独政権として自由に政治を行うつもりです。富裕層に優しく、貧困層に厳しい政治がまた5年も続くなんて、考えただけで恐ろしい」と話しました。
2年前にUKIPに入党したというジョッド・ドッグスさん(76)も、「選挙制度は公正さを求めて変化し続けている。(英国以外の)欧州では比例代表制が一般的だ。小選挙区制は過去の遺物でしかない」と批判しました。
地域政党が躍進
今回の選挙では、スコットランドの地域政党、スコットランド民族党(SNP)の躍進も注目を集めました。SNPは同地の全59選挙区中、56選挙区で勝利し、国政第3党に躍進。労働党は同地で40議席を失っており、同党敗北の一因となりました。
SNPはスコットランドで50%を超える支持率を維持し、この1年で党員数を約3万人から12万人に4倍化させるなど、圧倒的な支持を受けています。同地の有権者からは、「スコットランドの声を政治に生かせるのはSNPだけ」「二大政党(保守党と労働党)に違いはなくなった」などの声が相次ぎました。
ただ、SNPが持つ地域政党という特性や、英国からの独立志向を隠さない姿勢に、一部では不安も広がっています。
保守党に投票したというロンドンの女性教員(26)は、「国政が(1地域である)スコットランドを軸に動くべきではない」と指摘。スコットランドの首都エディンバラで商店を営む男性は、「SNPの躍進は他地域との対立を深めるだけだ」と話しました。