2015年5月6日(水)
特定教科書の押し付け 首長に権限無し
国会答弁でも明白
公立小中の採択
首長の教育行政への関与を強める改定地方教育行政法が4月1日に施行されたもとでも、公立小・中学校の教科書採択をめぐって、首長が特定の教科書を押し付ける権限は一切ないことが改めて浮き彫りになっています。 (丹田智之)
教科書採択は現在、教員らが参加して行われる教科書の調査研究に基づき、教育委員会が行っています。
来年度から中学校で使用する教科書は、検定に合格した教科書が6月下旬に各地の展示会で閲覧にかけられ、調査研究の結果を踏まえて8月末までに採択されます。
一方、地方教育行政法の改悪で、首長と教育委員会が協議・調整する「総合教育会議」が設置され、教育行政の基本的方針を定める「大綱」を首長が策定することになりました。
侵略美化勢力
これに関して、過去の侵略戦争を美化する育鵬社教科書の採択を推進する「日本教育再生機構」(八木秀次理事長)は、法改定によって「教育行政における首長の権限が強化する」「教科書採択についても該当する」と主張。同じく侵略戦争美化の自由社教科書の採択を求める「新しい歴史教科書をつくる会」も、総合教育会議に首長が「教科書採択の方針」を示し、「大綱」に盛り込まれれば、「教育委員会には尊重する義務が生じ、実行しなければならなくなる」と述べています。
しかし、首長が特定の教科書を押し付ける権限を持たないことは明白です。
日本共産党の畑野君枝衆院議員の質問(4月22日)に対し、文科省の小松親次郎初等中等教育局長は「改正前と改正後で変更されていません」と答弁。「(首長が)教育委員会に対し、特定の教科書の採択を求める権限は有しない」との見解を示しました。
小松局長は、首長が「教科書採択の方針」を大綱に掲げた場合でも、「教育委員会が尊重する義務を負うということではない」と答えました。
教員の役割大
また、日本教育再生機構が「教育委員が自らの視点で教科書を選ぶことができるように」と主張し、教員らによる調査研究を攻撃している問題についても小松局長は、「必要な専門性を有し、児童生徒に対して直接、指導を行う教員が果たす役割は決して小さくない」と答弁。調査研究で教科書の“順位付け”などの評定を行うことについても「不適切ではない」と述べています。
教科書改善の会(屋山太郎代表世話人)は「採択数の倍化、採択の全国化」などを掲げて、育鵬社教科書の採択を首長に働きかける運動を広げています。しかし、首長の権限強化をテコにした教科書押し付けの論拠は破たんしています。