2015年5月5日(火)
マイナンバー制度
施行前から利用拡大
徴収強化・給付削減狙う
安倍政権が来年1月から実施をねらう「マイナンバー(国民共通番号)」制度について、実施前から利用対象を拡大する法案が衆院内閣委員会で審議入りします。制度と法案の問題点をみると―。(深山直人)
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マイナンバーは、赤ちゃんからお年寄りまで住民登録をした全員に12ケタの生涯変わらない番号を付けて、社会保障や税の個人情報を国が一括管理・活用するものです。2013年、消費税と社会保障の「一体改悪」の道具として自民、公明、民主、維新などが賛成多数で強行しました。
一体的に監視
政府は「行政手続きが便利になる」といいますが、年に一度あるかどうかの申請などのさい所得証明書の添付などを省略できるといった程度です。
「メリット」を一番受けるのは国や行政のほうです。一人ひとりの社会保障と保険料・税の利用・納付状況を一体的に把握・監視し、徴収強化と社会保障費の抑制・削減に活用していくことができるようになるからです。
しかも国民にとってはプライバシー情報の漏洩、不正使用などそれ以上の危険性を抱えることになります。
年金、医療、介護、雇用や所得・納税などの情報は、それぞれの制度ごとに管理されていますが、共通番号で一つに結ばれることになります。個人番号が流出すれば、さまざまな個人情報が「芋づる式」に流出する危険が現実となります。
同様の制度を導入しているアメリカや韓国では個人情報の大量流出・不正使用が大問題になり、制度見直し議論が起こっています。
10月から通知
10月から住民票をもつ全員に番号を知らせる「通知カード」が郵送されます。
来年1月からは年金確認などの手続きでマイナンバーの使用を開始、希望者には顔写真付き「個人番号カード」を交付するとしています。
政府は自治体や企業に準備を急がせていますが、ほとんどの国民は計画を知りません。内閣府の2月発表調査では「内容まで知っていた」人は28%。この制度が国民の切実な要求ではないことを浮き彫りにしています。
ところが安倍内閣が今国会に提出している改定案は、預金口座や健康診断・予防接種、中所得者向け公営住宅の管理にも適用拡大すると定めています。
預金口座への適用は社会保障給付の資力調査や税務調査などに活用する狙いです。当面は任意とし、制度実施後の21年をめどに義務化する計画です。
番号法では施行後3年をめどに利用拡大について検討すると定めており、政府も施行状況をみて必要があれば検討すると国会で答えていました。施行もされないうちに利用拡大など許されません。
医療・健康情報は、利用内容や個人情報保護などの仕組みと併せて検討するとしていたものです。いまだに利用内容も保護措置も決まっていないもとで、なし崩し的に拡大することは大問題です。
制度実施を前にして準備の遅れがあらわになっています。
省令の整備も進まないため、自治体の準備も進んでいません。民間企業にも番号の利用が義務付けられ、情報管理体制などを整えなければなりませんが、多くの事業者は準備すら始めていません。
いまやるべきは対象の拡大ではなく、施行を中止し、廃止に踏み出すことです。