2015年4月30日(木)
首脳会談 対米従属、きわまる
国民無視の暴走政治約束
「戦後70年を機に日米同盟をいっそう強化する」との意義付けがなされた安倍晋三首相とオバマ大統領との日米首脳会談。これに先立つ27日、両首脳はリンカーン記念館を訪問しました。リンカーン大統領は「人民の人民による人民のための政治」という演説フレーズでも知られています。しかし、首脳会談での合意は、このフレーズとは裏腹に日本人民をことごとく無視したものとなりました。
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TPP交渉
国民不在 妥結まい進
日米両国首脳は、「日米共同ビジョン声明」で、環太平洋連携協定(TPP)交渉における日米協議の「大きな進展」を強調しました。首脳会談直前に行われた甘利明TPP担当相とフロマン通商代表の閣僚級会合は、交渉の具体的内容を日本国民にいっさい明らかにしませんでした。国民を蚊帳の外に置いたままで、首脳間で「大きな進展」を誇示するのは、国民の「知る権利」をないがしろにするものです。
国民の反対世論を踏みにじり、TPPへ突き進めば、日本の農業が破壊されるだけでなく、経済主権さえ奪われてしまいます。オバマ大統領は共同記者会見で、「米国では、多くの日本車が走っている。日本でももっと多くの米国車が走るのを見たいものだ」と強調し、米国の多国籍企業のために日本市場をいっそう開放するよう求めました。「(TPPは)米国企業に現在、十分に開かれていない市場を解放する」とも述べました。
日米首脳は、米国基準に基づく経済圏の構想を目指すTPPを日米同盟の戦略目標の一角に位置付け、日米同盟に依拠して12カ国のTPP交渉を推進する姿勢をあらわにしました。
オバマ大統領は会見で、「米日がTPP諸国の二大経済大国として、達成した進展を基に、より広い交渉の迅速で成功裏の妥結へTPP諸国をいかに導くかを話し合った」と述べました。安倍首相も、「私はバラク(米大統領)とリーダーシップを発揮して早期妥結を目指していきたい」と強調しました。
オバマ大統領はさらに、TPPによって米国基準を国際基準としていっそう広く各国へ押し付ける意図を次のように述べました。
「(TPPは)次へと進むわれわれのより広範な経済課題の重要部分となるものだ。世界市場の95%が海外にあり、向こう側でわれわれが競争していくことを確実にしなければならない。われわれが競争できると確信している」
安倍首相も会見で、「TPPは多くの国々からみて、模範となるようなもの、中国にとっても模範となるような新たな経済圏をつくるという野心的な試みだ」とし、「TPPに入っていない国々にとっても、こうしたしっかりとしたルールをつくって自由な経済圏をつくっていくことこそが繁栄につながる」と強調しました。
日本でも米国でも、TPPに反対する国民の根強い運動が続いています。国民を置き去りにして、首脳間の確認で交渉の早期妥結へまい進する両国政府の「暴走」が際立っています。
(北川俊文)
「戦争立法」
“精力的に作業”説明
「安全保障法制の整備について、精力的に作業している」―。安倍晋三首相は28日の日米首脳会談で、オバマ大統領に「戦争立法」の推進を誓いました。
会談に先立つ27日には、両国の外務・軍事担当相の会合(2プラス2)で新たな日米軍事協力の指針(ガイドライン)を決定しました。新指針は、自衛隊が地球上のどこでもいつでもあらゆる事態に米軍を支援し戦争に参加できるようにするもの。両首脳は会談後に発表した「日米共同ビジョン声明」で、「同盟を変革し」「日本が地域の及びグローバルな安全への貢献を拡大することを可能にする」ものだと誇りました。
「戦争立法」はこの新指針を法制化するものです。安倍政権が諸法案を国会に提出するのはこの5月中旬。国会ではまだ何も審議していません。国会審議よりもまず米国に約束するというのは、国民無視の最たるものです。
しかも世論調査では「戦争立法」(安保法制)に反対が賛成を上回っています(共同通信、「朝日」、いずれも3月)。首脳会談後の共同記者会見で「日本がアメリカの戦争に巻き込まれるとの懸念が出ている」との質問が出たのも、その反映です。
ところが、首相はこれに対して「レッテル貼りだ」と強い口調で反論。1960年の日米安保条約改定の際も同様の議論があったものの、「その間違いは歴史が証明した。安保条約で日本の平和は守られた」と述べました。
しかし、「戦争立法」は、日本が「巻き込まれる」どころか、自ら海外へ出て行って米軍の戦争に参戦するものです。「巻き込まれ」論を持ち出すこと自体、話のすりかえです。
何より、首相の態度からは、“米国と約束したことに文句を言うな”という民意じゅうりんの姿勢が垣間見えています。
「2プラス2」の閣僚会見では、自衛隊派遣先の想定として南シナ海やホルムズ海峡に言及がありました。発表された首脳会談の確認事項(ファクトシート)は、アフリカで武装勢力と対峙(たいじ)する国連平和維持活動(PKO)分野での協力を明記しました。
アフリカの南スーダンのPKOにはすでに自衛隊が派遣されています。「戦争立法」で武器使用や任務が拡大されるなら、自衛隊員が「殺し殺される」危険が現実のものとなります。
(小玉純一)
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辺野古新基地建設
沖縄の民意を足げに
「オバマ大統領へ沖縄県知事はじめ、県民は、辺野古移設計画に明確に反対しているということを伝えていただきたい」
安倍晋三首相の訪米を目前に控えた17日、沖縄県の翁長雄志知事は首相との会談で、沖縄の民意を伝えるよう強く求めました。
首相は「伝える」と約束。翁長氏の要望を受け入れざるをえなくなったのは、沖縄県民の約8割が新基地建設に反対しているという圧倒的民意に加え、全国的にも辺野古への新基地建設を推し進める政府の姿勢への批判の声が高まっているからです。
最近の世論調査を見ても、「反対」が53%(「毎日」20日付)、辺野古「移設」を「見直すべきだ」が47%(「日経」同)となり、いずれも、「賛成」「計画通りに」を上回っています。「朝日」21日付では、辺野古をめぐる政府対応を「評価せず」が55%となり「評価する」の25%を大幅に上回りました。
ところが、27日の日米外交・軍事閣僚による2プラス2共同声明で、辺野古「移設」が、普天間基地(沖縄県宜野湾市)問題の「唯一の解決策」だと明記。首脳会談が始まる前から、民意無視の姿勢を鮮明にしました。
首相は会談で、「翁長知事が(新基地に)反対している」と言及しました。ところが、民意をオバマ氏に“伝えた”直後に「辺野古移設が唯一の解決策としての立場は揺るがない」と自身の考えを言明。一方、オバマ大統領はこれに関して何の言及もせず、完全に無視しました。さらに、会談後の共同記者会見でも、共同声明でも、「沖縄の民意」についての言及はなく、米軍新基地建設推進の「互いの決意をあらためて確認」(安倍氏、共同会見)し合いました。
首脳会談が行われたその日、沖縄では県庁前や新基地建設が強行されている米軍キャンプ・シュワブゲート前、辺野古・大浦湾海上などで、「もう基地はいらない」「新基地建設を断念させよう」との抗議の声が終日、上げられました。
4月28日は沖縄にとって、1952年のサンフランシスコ講和条約発効で日本本土から切り離され、米軍の占領支配が継続した「屈辱の日」です。
その日にあわせた首脳会談で、沖縄の民意をまたしても踏みにじったことは許されません。
日米首脳会談を受けて翁長知事は29日の記者会見で、5月下旬に自ら訪米して、「新基地反対」を訴える考えを示しました。米政府は、真に民意を反映している翁長知事の言葉に、耳を傾けるべきです。
(山田英明)