2015年4月27日(月)
主張
「大阪都」住民投票
自治と生活破壊の暴走許すな
270万人が暮らす政令指定都市の大阪市を廃止して五つの「特別区」にバラバラにし、財源も権限も大阪府に吸い上げる「大阪都」構想の住民投票が27日に告示、5月17日に投票されます。橋下徹大阪市長と「大阪維新の会」が推進してきたもので、投票率がどんなに低くても賛成が反対より1人でも多ければ、戦前からの長い歴史を持つ大阪市は約2年後には廃止されるという、強引なやり方です。大阪市をなくせば、福祉や教育など市民向けのサービスが後退するのは目に見えています。大阪市をなくしたら「アカン」の声を急速に広げることが重要です。
市廃止でサービス後退
大阪市をなくす住民投票は、府と市の「二重行政」をなくすなどといって「大阪都」構想を推進してきた橋下市長と「大阪維新の会」が、「特別区設置協定書」を強引にまとめあげ、府議会・市議会で承認を取り付けたことによるものです。府・市議会とも一度は否決しましたが、公明党が投票だけならと態度を変えたため、住民投票に持ち込まれることになりました。
「大阪都」構想といいますが、今回の協定書には大阪市をなくし、中央、北、東、南、湾岸の五つの「特別区」を置くとあるだけで、大阪府は「府」のままです。「府」を「都」にするには国の法律改正が必要で、簡単ではありません。
現在の大阪市は政令指定都市で大きな権限や特別の財源がありますが、大阪市をなくしてつくられる五つの「特別区」は権限も財源も小さくなります。特別区の財源になるのは個人市民税や軽自動車税などで、法人市民税や固定資産税、都市計画税などはすべて府の財源です。まちづくりなどの権限も小さくなります。府との「財源調整」があっても具体化はこれからで、特別区の財政が苦しくなるのは明らかです。これまで大阪市で行われてきた、子ども医療費無料化の中学までの上乗せなども継続が難しくなります。
大阪市を無理やり五つの「特別区」に分割するため、国民健康保険、介護保険、水道事業、システムや施設の管理など100以上の事業を「一部事務組合」にゆだねるとしていることも大問題です。広域自治体などで事務組合をつくっているところはありますが、これほど広範な事業を任せているところはありません。府と特別区、事務組合の「三重行政」になるという批判もあるほどです。
現在の大阪市には約76万人の国保加入者がいますが、保険料が高すぎて払えないという声に押されて、大阪市が2014年度で176億円を支出して保険料を抑えています。大阪市がバラバラになり、事務組合にこの予算が出なくなると、保険料が一気に2万3千円も上がるという試算もあります。
「なくしたらアカン」の声
橋下氏らが進める「大阪都」構想は、大阪を「都」にするものでも、行政のムダをなくすものでもありません。住民向けのサービスを後退させ、たった一人の府知事に財源も権限も集中させ、思いどおりにさせるものです。
「大阪市をなくしたらアカン」の声は急速に広範に広がっています。大阪市は大阪だけでなく、日本を代表する大都市です。市民の力で大阪市を守り抜くかどうかは、全国にとっても重大な問題です。