2015年4月5日(日)
西普天間地区返還式典 沖縄基地問題めぐり火花
官房長官 「民意」の上に日米同盟
知事 原点は米軍の土地強奪
政府は4日、米海兵隊キャンプ瑞慶覧(ずけらん)の一部である西普天間住宅地区(沖縄県宜野湾市)の返還式典を同地区内で行いました。5日に翁長雄志知事との会談を控えた菅義偉官房長官も急きょ出席。昨年秋の県知事選後、初顔合わせとなった両者は、沖縄の基地問題の“原点”をめぐって火花を散らす形になりました。
(竹下岳)
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「西普天間は、安倍首相とオバマ大統領が合意した基地返還計画の、最初の返還事例だ。安倍政権は、沖縄の負担軽減のため、できることはすべてやる」
菅長官はこう述べ、日米両政府の“成果”を強調しました。
3月末に返還された西普天間住宅地区は、2013年4月の沖縄本島中南部の基地統合計画に基づいて返還されたものです。しかし、同地区の返還合意はすでに1996年にかわされていました。「県内移設」条件つきだったため、今日まで返還が遅れたのです。
辺野古移設固執
重大なのは、普天間基地の辺野古(名護市)「移設」が統合計画の核心だということです。菅長官は式典で「忘れてはならないのが、普天間基地の一日も早い危険性除去だ。この固定化は絶対に避けないといけない」と強調。式典終了後も記者団に「普天間基地問題が、辺野古移設の原点だ」と述べました。
前日の記者会見で菅長官は、「辺野古新基地ノー」を訴えた翁長知事が圧勝した知事選について「基地賛成、反対の選挙結果ではない」と述べ、県民の反発を受けたばかりです。菅長官の発言からは、“日米同盟が「民意」の上にある”という発想が透けて見えます。
一方、式典で菅長官と隣席だった翁長知事は、この発言をどう受け止めたのか。
「官房長官も考えがあるだろうが、原点は、県民みずからが差し出した基地ではないということだ」
知事はこう述べ、沖縄の基地は米軍が住民の意に反して強奪したものであり、「危険性除去」のために県民が新たな基地を差し出す必要はない、との考えを示しました。
条件つけば停滞
雄大な東シナ海を見下ろす斜面に立地する西普天間住宅地区。50年代に米軍が「銃剣とブルドーザー」で強奪し、米軍住宅を建設しました。
しかし、老朽化・遊休化が進み、いまでは朽ち果てた住宅だけが残っています。建物はアスベスト(石綿)を含んでいるため、解体も容易ではありません。汚染除去にも時間がかかり、地権者の手に渡るまで数年はかかる見通しです。
政府はここに国際医療拠点を設置する計画です。しかし、西普天間住宅地区は周囲を基地に囲まれているため、「陸の孤島」状態になる危険があります。
沖縄本島の幹線道路である国道58号に出るためには、隣接するインダストリアル・コリドー地区の返還が不可欠ですが、同地区の返還は県内の基地やグアムなどへの移設条件つき。しかも、返還時期は「2024年度又はその後」となっており、具体的なめどがたっていません。結局、移設条件がつけば、基地返還は進まないのです。
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