2015年4月4日(土)
主張
道徳教育
個人の尊厳を基礎にしてこそ
文部科学省は小中学校の「道徳」を「特別の教科」とする学習指導要領の改定を行いました。小学校では2018年度、中学校では19年度から実施されます。道徳の教科化は、これまではなかった検定教科書を使用して道徳を教え、かつ、これまで行ったことがなかった一人ひとりの子どもの心や道徳を評価するものです。従来とは次元の違う形で、子どもに「官製道徳」を押し付けるものです。全国紙・地方紙の多くが「皇民化教育を担った戦前の『修身』を思い起こさざるを得ない」(神奈川新聞)などと懸念を示しています。
教科化は憲法に逆行
国家権力が国民に特定の価値観を押し付けることは、憲法の定める思想良心の自由を侵すことにほかなりません。
日本共産党は道徳の教科化に反対するとともに、憲法の理念に沿った市民道徳をはぐくむ教育を進めることを主張します。
民主主義社会の道徳は、個人の尊厳と人権を互いに尊重することを基礎に置いたものです。そうした道徳は、上から「こうあるべきだ」と押し付けることはできません。自由な雰囲気のもと多様な価値観が認められる中で、さまざまなことを経験し学習することによって、自主的判断で選び、形成していくものです。
そのためには、なによりも学校や社会が、個人が尊重される場になることが必要です。体罰や不合理な校則など管理一辺倒の学校では、子どもたちが本当の意味で正義感や思いやりを持って人と接するようにはなりません。
学校で、現実に自分たちが直面している問題を解決する学級活動、子ども自身が話し合い、つくりあげていく行事などの自治的活動も大切にしたいことです。
また自然や社会のしくみを知る日々の学習は、子どもたちの自主的批判的精神をはぐくみます。さらに民主主義や人権の尊重には、憲法や子どもの権利条約についての学習も不可欠です。勤労の精神は、労働基準法などを学んでこそ、生きたものになります。侵略戦争の歴史を学び、その反省にたってこそ、本当に国を愛し、他国の人びとと連帯し、平和を守る精神を自らはぐくむことができます。
こうして市民道徳の形成は、学校生活全体で支えるものであり、その一つである「道徳の時間」も自主性が重要です。
ところが文科省は教科化する前から「道徳の時間」への統制を強めています。使用義務がないと国会で答弁している文科省作成の『私たちの道徳』の使用を繰り返し学校に求め、15年度は「道徳」の指導法を示した教師用資料を配布して、介入をさらに強めようとしています。
しかし道徳教育についての中央教育審議会答申でも「特定の価値観を押し付け」ることは「道徳教育が目指す方向の対極にある」と述べています。国も地方も、道徳教育への統制をやめるべきです。
戦争動員への利用許さず
重大なことは、道徳の教科化が「戦争立法」など「戦争する国づくり」と同時に進められていることです。ここには国民を戦争に動員するため、教育を利用しようという支配層の狙いがあります。そうした企てを許さず、自主的な市民道徳の教育を発展させることを日本共産党は呼びかけます。