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2015年3月30日(月)

きょうの潮流

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 桜の季節が巡ってきました。桜の名所、東京・目黒川のほとりの郷(さと)さくら美術館では、第3回桜花賞展が開催されています。若手日本画家30人が描いた、それぞれの桜▼爛漫(らんまん)と咲く桜、散りしきる桜、どの作品も、どこか痛みを感じさせます。桜には、過ぎ去って帰らないもの、失われてしまったものの面影が二重写しになるのかもしれません▼古代の桜は山深くひっそりと咲いていたのでしょうか。『万葉集』には〈阿保山(あほやま)の桜の花は今日もかも散り乱ふらむ見る人無しに〉(詠人(よみびと)しらず)と歌われています。『古今和歌集』の平安時代には〈見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける〉(素性(そせい)法師)と、都の町並みを彩る花へ▼そしていつしか、満開の豊かさよりも、吹雪のように一斉に散る風情が注目され始めます。赤穂浪士(あこうろうし)のあだ討ち事件を題材とした江戸時代中期『仮名手本忠臣蔵』には、「花は桜木、人は武士…」という決め台詞(ぜりふ)があります。桜は散り際が美しいもの、武士もまた死に際が潔いのが美しい、とする死生観の投影です▼桜が「祖国と天皇のために潔く散れ」と、兵士を死に追いやる軍国の花にされたのは明治時代。太平洋戦争敗戦直前には特攻隊のシンボルとなりました。〈散る桜残る桜も散る桜 九段の華の清き散り際〉―知覧特別攻撃隊となってわずか17歳で戦死した宮内秀治氏の辞世の歌です▼桜を愛する心情を利用して、若者たちの命を奪った日本の軍国主義。決して逆戻りしてはいけない。桜を見ながら思います。


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