2015年3月30日(月)
アジア投資銀に40カ国超
中国主導・欧州次々・米日は慎重
創設メンバー 月末締め切り
【北京=小林拓也】中国が主導し、年内の創立をめざすアジアインフラ投資銀行(AIIB)に注目が集まっています。欧州の主要先進国や韓国がすでに参加を表明。創設メンバーになるための申請締め切りの3月末までに40カ国超が参加する見込みです。
英国参加で変化
AIIBは、アジア各国の交通、電信、農業、都市開発、エネルギー建設などインフラ整備に融資や投資をするものです。2013年10月、中国の習近平主席がインドネシアの首都ジャカルタを訪問した際に提唱。昨年10月、中国、インド、シンガポールなど21カ国の代表が北京に集まり、創設で合意しました。
当初は、主にアジア諸国が参加を表明していましたが、今月12日に英国が参加を宣言したことで流れが変わり、先進7カ国(G7)のフランス、ドイツ、イタリアなど欧州諸国が次々と参加を表明しました。
AIIBは、資本金1000億ドル(約12兆円)で、出資比率は国内総生産(GDP)に基づいて決まります。中国が出資額の50%を占めることも可能になっています。欧州諸国は、中国の発言権が大きくなりすぎることを懸念しており、中国は「参加国が多くなれば、中国の出資比率は相対的に低くなる」と述べるなど不安払しょくに努めています。
アジア諸国の開発へ融資などを行う国際金融機関としては、米国や日本が主導する世界銀行やアジア開発銀行(ADB)があります。中国の楼継偉財政相は「世界銀行やADBなどは、貧困を減らすことを主目的としており、インフラ投資が主であるAIIBとは競争関係ではなく、相互補完関係だ」と指摘します。
ADBの試算によると、2010〜20年にアジアで8兆ドル(約960兆円)以上のインフラ投資が必要。中国は、既存の国際金融機関ではこの需要を満たすことができず、AIIBなど新たな機関が必要だと強調します。
「構造的矛盾が」
中国は、中国から欧州までを陸と海で結ぶ「一帯一路(新シルクロード)」構想を掲げ、400億ドル(約4兆8000億円)を拠出した「シルクロード基金」をすでに始動。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国)が均等に出資する新開発銀行(当初資本金500億ドル)創設も決めました。
一方、米国と日本は、運営の公正性や透明性が確保されていないなどとして、AIIB参加に慎重な姿勢を崩していません。
国際政治に詳しい北京大学の教授の一人は「国際社会での経済的地位が高まっている中国は、既存の国際金融機関では自らの地位にふさわしい発言権が与えられていないと感じている。そのため新たな機関をつくり、金融や経済の分野でさらに大きな役割を発揮したいと考えている」と解説します。
「米国が求めるのは、米国がつくったルールの中で中国が役割を発揮することだ。しかし、それは非現実的になってきている。AIIBの問題は、米中間の構造的矛盾を反映している」と同教授は指摘します。