2015年3月28日(土)
きょうの潮流
政府はあの手この手で、原発の安全神話を国民に押しつけようとしています▼原発コストの試算を議論する経済産業省の審議会でのことです。先日、経産省は“事故確率は追加的安全対策で低減するはず”として、事故に対応する費用を安く見せる方向で議論をすすめようとしたのもその一つです▼追加的安全対策とは、原子力規制委員会の新規制基準を満たすために、各電力会社が行う対策のことです。原発推進派の委員は、コスト計算に含める事故の発生確率が対策で「(従来の想定より)半分になっている」と、後押ししました▼しかし、その基準自体、東京電力福島第1原発事故の原因究明が終わらないもとで急いで作られ、事故の教訓を踏まえたものとは到底言えません。事故の危険がどれだけ減ったといえるのでしょうか▼新基準にもとづく審査を見ても、電力会社の姿勢に疑問を持つことが少なくありません。たとえば九州電力川内原発の審査で、規制委側の意向に沿うように地震想定を大きくした説明の際、九電が「エイヤッと大きくした」と語ったのを思い出します。審査をパスしたいだけで、安全より経営を優先しているとしか見えませんでした▼経産省の資料には、追加的対策によって事故が起きても「損害費用の総額は低減することが想定される」とも。しかし、福島原発事故の現実は、収束から程遠く、多くの住民は苦難を強いられ、事故費用はなお増え続けます。国民は原発事故のコストが巨大なことを知らされました。