2015年3月26日(木)
きょうの潮流
寒が戻った列島ですが、サクラ開花の便りは各地から。都心でも平年よりも早くソメイヨシノの花が咲いて、今月末には満開との予想も出ています▼〈むら鳥のさわぐ所や初桜〉。俳句や短歌の革新者、正岡子規にも桜を詠んだ作品は多い。子規は日本に伝来された野球にも情熱を注ぎ、選手として活躍。大好きだった野球の句も少なくありません。〈まり投げて見たき広場や春の草〉▼野球の用語を和訳したり、雅号に「野球(のぼる)」を用いたり。先達者として野球の普及に貢献しました。その子規の母校で彼が創設したとされる愛媛・松山東高校(旧制松山中学)の野球部が82年ぶりに出場したセンバツで初勝利をあげました▼相手も奇遇です。二松学舎大付は、前身の漢学塾で少年時代の夏目漱石が学んだところ。漱石は松山東とも縁があります。教員として赴任し、その経験を元にしたのが小説「坊っちゃん」です。同じ年に生まれた子規と漱石は、生涯を通して互いに敬愛する「畏友」でした▼話題を呼んだ対戦は最後まで手に汗握る大接戦に。大先輩たちもさぞハラハラドキドキしたでしょう。のちに俳聖、文豪と呼ばれた2人も、批評をぶつけ合って切磋琢磨(せっさたくま)しました▼若くして病にたおれた子規は、病床のなかでこんなことを書いています。「何事によらず、革命または改良ということは必ず新たに世の中に出てきた青年の力」であると。球児たちの一投一打に、若い命を燃やしながら時代を変えていった先人の姿が重なりました。