2015年3月20日(金)
「戦争立法」合意急いだ与党の事情
米大統領選から逆算
首相訪米の“手土産”
自民・公明両党は20日、昨年7月の「閣議決定」に基づき、米軍のあらゆる戦争を支援する「戦争立法」で基本合意します。2月6日の協議再開から、わずか1カ月半という拙速な合意の背景には、来年秋の大統領選を控えた米国の政治日程がありました。
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「今年秋以降、オバマ大統領は身動きが取れなくなる。それまでに重要な決定をしようと、米議会の議員と話した」。与党協議に参加している公明党の遠山清彦衆院議員の発言です。(2月20日、都内のシンポジウム)
“今国会で成立”
米国では来年11月に大統領選が行われます。3選は禁じられており、2期目のオバマ氏は今年秋以降、重要な決定ができない“死に体”になると言われています。ここで遠山氏が挙げた「重要な決定」は、環太平洋連携協定(TPP)の交渉妥結と日米軍事協力の指針(ガイドライン)再改定です。
昨年秋のガイドライン中間報告は、「戦争立法」の整備を求めた「閣議決定」の内容を「適切に反映」するとしています。オバマ政権が“死に体”になる前に、何としてもガイドラインを再改定し、「戦争立法」を成立させる―。そのために、与党は法案を5月下旬にも提出し、通常国会の会期(6月24日)を8月まで大幅延長してでも成立させる構えです。
もう一つの事情は、4月下旬から予定されている安倍晋三首相の訪米です。TPPや、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設の“進展”が不透明な中、ガイドラインと「戦争立法」が不可欠な“手土産”になっています。
日米両政府は首脳会談に先立ち、外交・軍事閣僚による「2プラス2」をワシントンで開き、ガイドラインを再改定して「強固な同盟関係」を演出する狙いです。そのためにも、「戦争立法」での与党合意が急がれているのです。
出口先にありき
そもそも、2月6日の協議再開当初から、「3月20日基本合意」という出口が決まっていました。与党協議座長の高村正彦自民党副総裁が、26日から訪米するためです。
高村氏は米政府関係者と懇談を予定しています。この中で与党合意を説明し、首相訪米の地ならしをするものとみられます。
「いかなる事態でも国民の命と平和な暮らしを守り抜く」―。18日に配布された基本合意案には冒頭、こう記されています。しかし、実態は国民不在、徹頭徹尾、米国に顔を向けた協議です。