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2015年3月19日(木)

きょうの潮流

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 ヤシ科の植物シュロ(棕櫚)は国内の温暖な地域にも育ち、樹皮は古くから利用されてきました。網や縄、たわしやほうき。強靱(きょうじん)で伸縮性に富むシュロの繊維は生活に密着しています▼日本が中国への侵略戦争を拡大していったころ、シュロの繊維が市場から消えたことがあります。買い占められ、長崎の造船所に集められていたのです。極秘中の極秘だった巨大戦艦の建造を隠すために▼つなぎ合わせたシュロ縄のすだれの中で形になっていく怪物のような物体。作業に携わった者は一切漏らさずという宣誓書に署名させられ、街にはかん口令が敷かれました。目を光らせる特高や憲兵。中国人街が襲われ、拷問にあう作業員や市民も…▼吉村昭の小説『戦艦武蔵』に詳しい。「大和」とともに膨大な国家予算と人員をつぎ込み、技術の粋を結集してつくられた世界最大の“不沈艦”。しかし戦争はすでに、大艦巨砲から航空機の時代に移り変わっていました▼太平洋戦争末期、力を発揮することなくフィリピン沖で撃沈された武蔵。先日、インターネットで武蔵とされる船体の様子が公開されました。海底に散らばる残骸からは、ともに沈んだ千人をこえる乗組員の無念の思いが伝わってきます▼関係者を訪ね歩き、聞き取り、徹底した取材で戦争のはかなさや愚かさを描いた吉村文学。「歴史の記録は後世のよりどころとなる。責任は重く、大きい」。長い年月の後にふたたび世に現れた巨大な骸(むくろ)。日本を滅亡へと招いた無謀な戦争の記録です。


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