2015年3月9日(月)
きょうの潮流
膨大な税金と時間をかけ、東京の都心を取り囲むように走る首都高中央環状線が全線開通しました。計画から半世紀、わずか47キロの道路におよそ2兆円もの費用が投入されました▼1日には、首都圏から東北の太平洋沿岸を結ぶ常磐自動車道が全線開通。週末には北陸新幹線も開業します。より速く、より近く、より便利に。時間やお金、労力を注いで追求した結果は、私たちの生活にどんな変化をもたらすのか▼「復興の起爆剤」と安倍首相が急がせた常磐自動車道には安全への懸念がつきまといます。福島原発事故の帰還困難区域を通り、空間の放射線量も高い。そこで事故が起きたら、何度も行き来する運転手への影響は?不安はつきません▼道は通っても故郷には戻れない。福島ではなお12万人が避難、2万3千をこえる人々が仮設住宅での暮らしを余儀なくされています。4年がたつ今も事故は収まるどころか、空や海、大地に放射性物質や汚染水を垂れ流しています▼長期化する避難生活の実態を学ぼうと先月、千葉の看護学校の学生が被災地を回りました。いま一番困っていることを仮設で聞くと、全員が「ここに暮らしていること」と答えたそうです。民医連の機関紙にありました▼生業(なりわい)、家族、ふるさと―。人間の営みのすべてを奪う原発事故。苦しむ被災者を尻目に政府や東電は賠償さえ打ち切ろうとしています。きのう国会の周りには、この国の進む道を問いただす声がひびきました。「福島を忘れるな! 再稼働を許すな!」