2015年3月3日(火)
戦後70年談話 首相の論点
戦争の歴史そのものが欠落
中身ない「反省」
安倍晋三首相が今夏に発表する「戦後70年談話」は、戦後50年の「村山富市首相談話」の核心的内容を引き継がないのではないか―。この問題が安倍首相自身の言葉から浮かびあがっています。
五つの論点
安倍首相は2月25日、首相官邸で開いた「戦後70年談話」に関する有識者会議の初会合で、「70年談話」の「論点」として5点をあげましたが、「村山談話」の核心部分である「植民地支配と侵略」、「痛切な反省」と「心からのお詫(わ)び」というキーワードが何もありません。
5点とは、(1)20世紀の世界と日本の歩み、20世紀の経験からくむべき教訓(2)戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献の評価(3)米国、豪州、欧州の国々、特に中韓をはじめとするアジアの国々などと歩んできた和解の道(4)21世紀のアジアと世界のビジョン、日本の貢献(5)日本がとるべき具体的施策―です。過去の歴史に言及しても「20世紀の世界と日本の歩み」などとあいまいで、戦争の歴史そのものが論点から欠落しています。
安倍首相は有識者会合で、「先の大戦への反省、戦後70年の平和国家としての歩み、その上に、これからの80年、90年、100年がある」と述べました。しかし、「侵略」や「植民地支配」という言葉を使わずに「反省する」といったところで、それはまったく中身のない「反省」です。
そもそも安倍首相は1月25日のNHKインタビューで、「植民地支配と侵略」への「痛切な反省と心からのお詫び」という「キーワード」を引き継ぐのかと問われ、最後まで「引き継ぐ」とは言わず、さらに「キーワードを同じように使うことではないのか」と問われると、「そういうことではない」と明言しています。
批判は必至
この点で、有識者会議の座長を務める西室泰三日本郵政社長は、初会合後、記者団に「(過去の談話の)キーワードを入れろ、入れないと指示する気はまったくない」と語っています。
首相が「植民地支配と侵略」への「反省とお詫び」などの文言を避ける立場に立った「談話」を発表するなら、侵略戦争を否定する戦後国際秩序を覆す試みとして内外から厳しい批判を受けることは必至です。(山田英明)