2015年2月27日(金)
国民の知る権利侵す秘密保護法
情報監視審査会始動について
衆院議運委 塩川議員の意見表明
日本共産党の塩川鉄也議員が26日の衆院議院運営委員会で、国会の秘密保全体制(情報監視審査会)の始動に関して行った意見表明は以下の通り。
安倍政権が成立を強行し昨年12月10日に施行した秘密保護法は、国民の知る権利を侵害し、日本国憲法の基本原則を根底から覆すものであり、国民の多くが不安や疑問を抱き続けています。秘密保護法は廃止すべきものです。
国会の自殺行為
ところが、本日、自民・公明の政権与党は、国会を政府の秘密保全体制に組み込むため、「秘密国会法」に従って、国会職員に人権侵害の適性評価を行う「基準」を決定し、常設の秘密会「情報監視審査会」を始動させようとしています。これは、政府を監視するという国会の第一義的任務を投げ捨てる国会の自殺行為であり、断じて認められません。
「秘密国会法」というべき法改定は、昨年6月の通常国会の会期末、自公両党が当委員会でわずか7時間の質疑で採決を強行し、さらに法案の問題点が噴出する中で参院でも7時間で質疑を打ち切り、結局、自公両党のみの賛成で強行成立させたものです。
本日の国会職員の適性評価の実施基準の審議も、きわめて短時間で責任ある答弁が十分に担保されないものであり、こうしたやり方で国会の秘密体制を始動することは到底許されません。
なぜ、国会の委員会や国会議員などが秘密を漏らさない厳格な仕組みをつくらなければならないのでしょうか。
秘密保護法第10条には、政府・行政機関は、国会が秘密保全の措置をとらなければ、特定秘密を提供しないと定められており、国会に厳格な秘密保全体制をつくる国会法改定は、この10条の規定に従ったものであります。
常設の秘密会である「情報監視審査会」は、委員8人で構成され、審議内容も会議録もすべて非公開です。担当国会職員に「適性評価」(身辺調査)を義務づけ、電波傍受を遮断する防護された特別の会議室まで設ける体制をとろうというのです。
自公両党は、こうした国会の秘密体制は、「政府から特定秘密の提供を受けその運用を監視するため」だといい、「国会に提出された特定秘密が万が一にも漏れることのないよう、さまざまな措置を講じる」と説明してきました(2014年6月10日、衆院議運委)。
しかし、もともと、何を特定秘密にするかは秘密であり、国会がどんなに厳格な秘密保全の仕組みをつくっても、政府が特定秘密を国会に提出するかどうかは政府の判断次第というのが秘密保護法です。
たとえ政府から秘密が開示されても、情報監視審査会の審査は秘密会で、会議録は公開されず、委員ですら許可なく閲覧できない。秘密の開示をうけた議員は、その内容を国会の外で漏らせば刑罰に処され、国会質問でとりあげたら懲罰の対象となり除名処分まで受けかねないのです。憲法51条が保障する議員の発言・質問・討論の自由を奪うものであります。
仮に、予算委員会が議院証言法・国会法にもとづき、政府に対して資料提出を求め、政府が特定秘密が含まれるとして提出拒否を疎明した場合、情報監視審査会はその疎明を審査し、受諾し、提出しなくてもよいとの決定を行う場合があるとされています。50人の委員で構成する予算委員会の決定を、8人の委員で構成する情報監視審査会がその理由も明らかにせず覆すことになるのです。常任委員会による国政調査権の行使を制約するものにほかなりません。情報監視審査会は、政府が拒否した特定秘密の提出の勧告を行うことも規定していますが、この勧告には強制力はありません。
秘密の共犯者に
不十分であっても国会の監視機関が必要だ、という議論がありますが、いま進められようとしている体制は、特定秘密体制にお墨付きを与えるだけではなく、国会が政府の秘密体制に自らとりこまれ、政府の秘密を国民の目から隠す、秘密の共犯者にしてしまうものです。政府監視とはまったく逆で、国会議員を監視するものにほかなりません。
国会が政府を監視するとは、どういうことでしょうか。
国会は、主権者国民を代表する唯一の立法機関であり、国権の最高機関です。憲法は、国会に国政調査権を保障し、国会の公開原則、議員の発言権保障を明記しています。
このもとで国会は、国政のあらゆる分野で国政調査権を行使し、とりわけ日米安保の秘密をはじめ政府・行政の実態に迫り、国民に明らかにする役割を担っているのであります。
国会の資料要求に対し政府が提出を拒否するなら、その理由を内閣声明として明らかにせよ、というのが従来の国会法の規定です。政府が内閣声明で「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」と拒否すれば、それが拒否に値するかどうかが、国民の前で問われることになります。提出・拒否が国民に公開されることが大事です。
国民に知られない秘密会で政府の説明を審査し、何を議論したかも国民に明らかにしないで、どうして政府監視の役割がはたせるでしょうか。
国会の資料提出要求に対して政府が内閣声明で拒否した事例は、1954年、造船疑獄事件をめぐり吉田内閣の法務大臣が検察当局に指揮権発動した問題での証言拒否の一件だけです。それ以外では、政府が国会の要求に応じてきたわけではありません。現実の国会は、国政調査権を行使する主体である委員会が政府に資料要求することを、委員会の多数を占める政府与党が阻むため、委員会の正式の要求にならない場合がほとんどです。内閣声明を要求するところまでいかないのが実態です。国会が本来の権限を行使できていない現実のうえに、秘密保全のハードルをつくれば、国会はいっそう無力化されてしまいます。
いま国会に問われているのは、国会に秘密保全体制をつくって特定秘密を提供してもらうことではありません。
国民の目と耳、口をふさぎ、国民の言論・表現を抑圧し、日本国憲法の基本原則を根底からくつがえす希代の悪法である秘密保護法を廃止することこそ求められているのであります。