2015年2月27日(金)
主張
新たな汚染水漏れ
管理でも「封じ込め」でもない
2011年3月11日の事故発生からまもなく4年を迎える東京電力福島第1原発で、放射性物質で汚染された水が海に漏れだしていることが相次いで明らかになり、漁業者などから批判の声が上がっています。なかでも2号機の原子炉建屋の屋上にたまっていた放射性物質が雨などで流され、雨どいや排水路を通じて高濃度で外洋に漏れ出していたのは重大です。安倍晋三政権は、汚染水は「アンダーコントロール」(管理下)にあり、影響は「ブロック」(封じ込め)されているといい続けていますが、まったく事実にもとづかない国民を欺く態度は明らかです。
1年以上も東電まかせ
問題の汚染水漏れは1年以上前の13年11月に1〜4号機の山側排水路に高濃度の汚染水が流れ込んでいることや、昨年4月以降にも基準以上の汚染水が流れ出ていることが、分かっていたといいます。にもかかわらず、事故で2号機屋上に飛び散った放射性物質が原因と分かるまで、東京電力もその後報告を受けた原子力規制委員会も何の対策もとっていなかったというのですから重大です。
菅義偉官房長官は25日の記者会見で、汚染水が漏れているのは分かっていたがその原因が2号機の屋上からと特定するのに時間がかかったとのべ、あくまでも「アンダーコントロール」だと主張しました。しかし1年以上にわたって東電任せを続け国民には隠しておいて、政府が責任をもって管理したなどとはとてもいえません。
しかも問題の高濃度汚染水が流れる排水路は、港湾内ではなく外洋に直接通じています。東電が1年以上も何の対策もとらず、外洋への垂れ流しを続けたのは重大です。安倍首相が汚染水問題は「アンダーコントロール」で影響は「ブロック」されていると発言して反発を買ったのは13年9月ですが、そのときも汚染水は少なくとも港湾内にとどまっているのが根拠でした。ところが安倍首相の発言の直後から外洋への垂れ流しが続いていたのですから、東電や原子力規制委はもちろん政府の責任は重大です。
汚染水漏れで放射性物質が外洋に拡散すれば、新たな海洋汚染がさらに広がることが懸念されます。漁業関係者などが「東電との信頼関係が崩れた」と怒るのは当然であり、政府と東電はただちに対策を具体化すべきです。
今回の汚染水漏れが明らかになる直前には、原発敷地内の汚染水をためるタンクなどの間を通り港湾に流れ込む排水路からも汚染水が検出されました。原因は不明です。汚染水問題が「アンダーコントロール」にないことは明らかであり、政府は東電任せの姿勢を根本から改めるべきです。
汚染水対策は最優先で
福島第1原発の汚染水は、事故のさい大量に発生し、その後も地下水が流れ込んで増え続けています。政府と東電は汚染源を取り除く、汚染水に水を近づけない、汚染水を漏らさない―を原則にしていますが、どれもうまくいっておらず抜本解決は程遠い状態です。
今回の新たな汚染水漏れはあくまでも氷山の一角です。汚染水問題が解決しなければ、事故の収束や廃炉対策も前進しません。東電任せではなく、政府が責任をもち英知を結集して、最優先で汚染水対策を進めることが不可欠です。