2015年2月23日(月)
政府・与党 恒久法制定で中東派兵に道
人質検証待たず地ならし
IS戦へ軍事策次つぎ
過激武装組織ISによる日本人2人の殺害を警告する動画の公開から1カ月を迎えた20日。政府・与党は集団的自衛権行使容認を具体化する安全保障法制の中核となる海外派兵恒久法の議論を開始しました。(池田晋)
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恒久法によって、米国を中心とする有志連合がイラクやシリアで展開するISへの対テロ壊滅作戦に、自衛隊が参戦する道が開かれます。人質殺害事件の検証も待たず、安倍政権は中東派兵に向けた地ならしを加速させています。
政府が示した恒久法の原案は、国連安保理決議を派兵の要件としておらず、地理的な制約や、支援相手国の制約もなし。周辺事態法からも地理的制約をはずす方針で、法制上は対ISへの有志連合へ軍事支援する環境が整います。
実際、安倍晋三首相は有志連合が実施する空爆への参加は「ありえない」とする一方、後方支援については「憲法違反ではない」「政策的に行わない」(3日)などと容認する姿勢に含みをもたせています。
関与強め法整備
ISは、日本人2人を殺害した上、今後も世界中で日本人を標的にすると宣言しています。日本社会全体がテロとどう向き合っていくか、改めて問われています。
しかし、議論の土台となるべき今回の事件への対応について、政府は自ら検証するといいながら、報告書は4月まで公表されない見通し。菅義偉官房長官は、秘密情報が多く含まれることを示唆する一方、「政治家は(検証対象に)考えていない」(10日)と述べており、消極姿勢が目立っています。
対照的に政権は、事件を口実に中東への軍事的関与を強める姿勢を打ち出しています。
安倍首相は人質事件に絡め、自衛隊の軍事救出作戦を可能にする法整備に取り組む考えを表明。中東で軍事情報の収集を強化するため駐在武官の増員や、米国の中央情報局(CIA)のような対外情報機関の設置についても「研究していきたい」と述べました。
さらに、中谷元・防衛相は首相が固執するペルシャ湾での機雷掃海に加え、イエメンの情勢悪化を受け、紅海も派兵対象となるとの考えを示しました。
海外基地強化も
救出作戦や海外派兵の判断には、現地の情報が不可欠となります。情報機能の強化は、派兵の基盤整備ともいえるものです。
加えて防衛省は2015年度予算案で、紅海の入り口に位置するジブチの自衛隊基地の強化に向け、調査費3000万円を計上。ある自衛隊元幹部は「ジブチがあるから、空爆支援は今でも可能だ」と指摘。「空爆で弱体化した後に復興支援などで入るシナリオが可能性としては高い」とも話します。
安倍首相はISを名指ししてテロとたたかう姿勢を強調しており、恒久法で「戦地」派兵される危険は現実味を帯びてきています。
安倍政権が進める中東に関わる軍事政策
安保法制
多国籍軍・有志連合支援の派兵恒久法
自衛隊による在外日本人救出の法整備
情報機能の強化
ヨルダンなどへの駐在武官の増員検討
対外情報機関(日本版CIA)の研究
海外基地
ジブチの基地強化へ調査費