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2015年2月21日(土)

「理論活動教室」 講師・不破哲三社研所長

●第3講「政策活動について」(下)のつづき

政策は党綱領の具体化

天皇制、9条、テロ問題、「ルールある経済社会」…

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(写真)不破哲三社研所長の講義を終えて拍手する受講生=17日、党本部

 党綱領と政策活動について話を進めた不破さんは、2004年に改定した綱領の関係箇所を読み上げながら、「政策とは綱領で示した方向の現段階での具体化という意味をもっている」と強調しました。

 憲法と民主主義の分野で現行綱領は「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」としています。「憲法の全条項をまもる」と書くようになったのは改定以降です。

 なぜか。一つは、天皇制の問題です。以前の綱領は「君主制の廃止」が民主主義革命の目標に入っていたために「憲法改正」が必要でした。党は、2004年の綱領改定の際に、君主制とは何かをあらためて研究し、「国政上の権能を持たない君主制はない」ことを明らかにしました。日本国憲法は天皇が象徴として国政に関する権能を持たず、国民主権が明記されています。不破さんは「天皇の『国事行為』と『国政上の権能』を厳格に区別したので、憲法の『全条項をまもる』と言える立場を確立したのです」と話しました。

 もう一つは、憲法9条の問題です。1970年の安保論争当時、68〜71年ごろの党の政策文書には、憲法を進歩的に改定することが問題になった時に「必要な自衛措置については、新しい内外情勢に即し、国民の総意にもとづいて憲法上の扱いを決める」といった趣旨をかならず書き込んでいました。

 これを発展的に解決できるようになったのは、一つは世界情勢の変化です。ソ連の崩壊を契機に、大国中心でない世界が開けつつあります。もう一つは、日本共産党が野党外交でアジア諸国と独自に関係を持ち、アジアの平和体制を築く展望を発展的につかみ出したことです。2000年の第22回党大会で“自衛隊の段階的解消”の方針を打ち出したことは、同時に、9条の完全実施への道筋を示すことを意味しました。そこで示したアジアの平和体制を築く展望は、野党外交の実践を経て、党が国際舞台で「北東アジア平和協力構想」を提案する段階にまできています。

 外交分野では、安保問題について「段階的解消」を唱える向きもありますが、安保条約が存続しているもとでは、基地一つ減らすのにも米国の合意が必要になります。しかし、「廃棄」することは、日本の議会と政府が意思を示せば可能です。不破さんは「前例はすでにある」として、フィリピンでは92年に基地貸与協定の期限が切れた際、議会で不延長の決議をしてすべての米軍基地が撤去されたことを紹介しました。

 テロ問題についても、綱領が明記していることを強調しました。「一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロの根絶のための国際的な世論と共同行動を発展させる」としています。国際的な世論と共同によるテロ根絶の活動こそ必要です。不破さんは、パレスチナの解放運動に対しても民間人へのテロ行為を批判してきたことも紹介し、「いま過激集団ISにたいして日本共産党がとっている態度も綱領の立場に合致するものです」と述べました。

 領土問題について不破さんは「これはわが党の独壇場です」と力説しました。千島問題では政府は交渉する立場を持ちません。尖閣諸島の問題でも、早くから歴史を調べ上げて日本の領土だと立証。田中角栄首相が周恩来首相と交渉した際にとった「棚上げ論」というだらしない態度とは対照的です。

 国際経済秩序については、「戦後の経済秩序は“異なる体制の間の共存”という原則がないままきている」と指摘しました。歴史的には、第1次世界大戦後の経済再建のために1922年にジェノバ会議が開催された際、資本主義諸国がソ連を会議に参加させるために掲げた原則が「各国の経済体制、政治体制には互いに干渉しあわない」というものでした。

 ところが、第2次世界大戦後にソ連は経済分野の国際会議から脱退した結果、資本主義世界では、資本主義一色の国際経済秩序が当たり前のこととして推移してきたのです。それが、発展途上国や社会主義をめざす国が大きな比重を占めるようになった今日、いろいろな矛盾をひきおこすようになってきました。世界は、経済面でも新しい国際秩序を探究すべき時期に来ています。そういう角度から、不破さんは、綱領が新しい「民主的な国際経済秩序の確立をめざす」と明記していることの意義を強調しました。

 経済の分野では「『ルールある経済社会の確立』を“新福祉国家”と読み替えて、社会運動の基本目標にしようとする意見もあるが、私たちはそういう立場はとらない」と述べました。それは、安保や憲法の問題などを日本の民主運動の基本目標から外すことにもなるし、社会的な分野にかぎっても、「ルールある経済社会」の「ルール」に青写真的な固定した目標はないからです。

 「ルールある経済社会」をつくる上で、「大企業に対する民主的規制」は重要な手段です。日本にはすでに国家が経済に介入する多くの手段が存在しています。現状では、これらは、大企業を援助する方向で活用されていますが、これを労働者や国民の利益を守る方向で活用すれば、民主的規制のための手段にかえることができます。その上で不破さんは、社会変革の現段階における大企業に対する基本的態度について、党綱領の関係の条項を紹介しながら、「大企業への規制は、日本経済の健全な発展に資してほしいというもの」だと強調しました。

 不破さんは最後に、理論活動教室をこの第7回で区切りをつけたいと述べました。「この1年近く、党の理論活動史、マルクスの読み方、政策活動について学びあってきたことを、いっせい地方選挙に、さらにはいよいよ開始された自民党政治との本格的対決で勝利の力にするために生かしてもらいたい」と結ぶと、会場は感謝と決意を込めた大きな拍手につつまれました。


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