2015年2月20日(金)
きょうの潮流
人種差別と思われる行為が、またも波紋をひろげています。パリの地下鉄で電車に乗り込もうとした黒人男性を、車内にいた集団が押し飛ばし、乗せないという事件が起きました▼外電によると、集団はサッカー・英プレミアリーグのクラブ、チェルシーのサポーター。居合わせた人が撮影した動画には、彼らが「俺たちはレイシスト(差別主義者)」とくり返し大声で叫ぶ姿が映し出されています▼公共の場で公然と実行された人種差別的な行為。欧州だけでなく、動画を見た多くの人々が衝撃を受けています。チェルシーは忌まわしい行動だとして、「サッカー界でも社会でも受け入れられない」と非難する声明を出しました▼日本でも最近、問題になった発言があったばかりです。作家の曽野綾子氏が、南アのアパルトヘイト(人種隔離)政策を許容するコラムを産経新聞に掲載しました。“人種によって分けて住むほうがいい”。そんな考えを堂々と披露しています▼本人は称揚などしていないといいますが、肌の色で居住区を分けることはまさにアパルトヘイトそのもの。人道に対する犯罪を肯定するような記事を載せるメディアを含め、内外からの批判は当然でしょう▼人種差別の根絶に結束がもとめられる国際社会の中で日本の品位をおとしめた発言。よく生き方や道徳を語る曽野氏は、品というものは勉強によって身につくと自著で説いています。「本を読み、謙虚に他人の言動から学び、感謝を忘れず、利己的にならないこと」だと。