2015年2月17日(火)
主張
10〜12月期GDP
「アベノミクス」が足引っ張る
昨年10〜12月期の四半期別国内総生産(GDP)の第1次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・6%増、このテンポが1年間続くと計算した年率換算で2・2%増となり、3四半期ぶりにプラスとはなったものの、事前の予想を大幅に下回る低い伸びです。とりわけ個人消費や住宅投資、設備投資などの伸びは鈍く、民間需要に力強さが欠けていることを示しています。昨年4月の消費税増税や安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が、景気の足を引っ張っていることを浮き彫りにしています。
予想を下回る低い伸び
四半期別のGDPは、昨年4月の消費税増税のあと、4〜6月期は前期比実質1・7%減、7〜9月期は同0・6%減と、2期連続で大幅な落ち込みとなりました。消費税増税が消費を冷やし、売り上げを落ち込ませたためで、この結果をうけ、安倍政権は昨年末、今年10月に予定していた消費税再増税を1年半延期すると決めました。安倍政権の経済政策の行き詰まりは明らかです。
今回発表された10〜12月期のGDPは、消費税増税から半年たつので増税の影響はほぼ出つくしたとの見方から、民間調査機関などは年率で4%近い増加を見込むところが大半でした。しかし、結果的には予想を大幅に下回る低い伸びになりました。増税の影響が長引いていることに加え、安倍政権の経済政策が景気回復を妨げるものになっているからです。
とりわけ深刻なのは個人消費や民間設備投資などの鈍い伸びです。GDPの約6割を占める個人消費は前期比0・3%増と7〜9月期の0・2%増に並ぶ低い伸び、民間住宅投資は1・2%減、民間企業設備も0・1%増とほぼ横ばいです。消費税増税で落ち込んだ需要の回復が遅れているうえに、物価上昇に収入が追いつかず、実質購買力が低下していることが、消費や民間投資の足を引っ張っているからです。
10〜12月期のGDP統計で、働いている人の収入を示す雇用者報酬を見ると、前年に比べ実質0・5%減と、この1年間一度も前年を上回ったことがありません。名目では2・2%の増加ですが、物価が上昇しているため、賃上げが追いついていないのです。厚生労働省の毎月勤労統計では、実質賃金は昨年12月まで18カ月連続で減少を続け、総務省の家計調査でも、勤労者世帯の実質実収入は15カ月連続の減少です。大企業のもうけを増やせば賃金も雇用も増え、消費が拡大するという安倍政権の「トリクルダウン」(したたり落ちる)の経済政策が、根本から間違っているのは明らかです。
暮らし重視の経済政策を
安倍首相は通常国会の施政方針演説でも、「この2年間、全力で射こんできた『3本の矢』の経済政策は、確実に成果をあげています」と、「アベノミクス」を自慢しました。しかしもっとも基本的な経済統計であるGDPの動きは、こうした“成果”は絵空事にすぎないことを浮き彫りにしています。
消費税増税は延期だけでなくきっぱり中止するとともに、大企業のもうけを最優先する「トリクルダウン」の経済政策はやめ、国民のふところを豊かにする経済政策に転換すべきです。国民が豊かになれば、消費も投資も増えます。