2015年2月17日(火)
経済の混乱でも 地球の裏側で武力
首相答弁
16日の衆院本会議での安倍首相の答弁は、集団的自衛権の「限定」要件を自ら突破し、「限定」どころか「地球の裏側」まで行って武力行使することを宣言したものです。しかも、「イスラム国」による日本人人質殺害事件の検証もないまま、中東地域での武力行使の可能性に言及したもので、いっそう緊張を高める重大発言です。
集団的自衛権行使容認の「閣議決定」(昨年7月1日)後、安倍首相と公明党との間では、中東・ホルムズ海峡での機雷敷設が、“日本に対する軍事攻撃に匹敵する危険を発生させる”といえるのか(「新3要件」を満たすか)をめぐって、意見の食い違いが指摘されてきました。“食い違い”を埋めるはずの13日に安保法制の与党協議が始まったばかりの段階で、2015年度予算審議の代表質問で冒頭に安倍首相自身が一方的に「結論」を押し付けたことになります。公明党の対応も注目されます。
戦禍及ぶ危険?
「閣議決定」は集団的自衛権行使の要件として、「国民の生命、財産、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」がある場合と定めました。その中身は「わが国が武力攻撃を受けたのと同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」、「(日本に)戦禍が及ぶ蓋然(がいぜん)性」だと説明されてきました。ホルムズ海峡に機雷が敷設されただけで、日本に戦禍が及ぶ重大な危険といえるかは、だれもが疑問を持つ問題です。
ところが安倍首相はこの日の答弁でも、「ホルムズ海峡に機雷が敷設されれば、かつての石油ショックを上回るほどに世界経済は大混乱に陥り、わが国に深刻なエネルギー危機が発生する」などとして、行使の可能性を認めたのです。
「限定」は空文句
「戦禍が及ぶ蓋然性」とは、経済混乱が生じる恐れとは全く異なります。日本が武力行使で他国への攻撃を排除しなければ、相手国の軍事攻撃が日本に迫ってくる危険が大きいという軍事的危険が問題なのです。
安倍首相の発言は、集団的自衛権を「限定」することで「憲法9条の規範性が維持された」などという、政府・与党の「正当化」論が、空文句にすぎないことを示すものです。(中祖寅一)