2015年2月16日(月)
日本共産党の躍進で橋下・維新政治の野望を打ち破ろう
大阪 山下書記局長の演説から
日本共産党の山下芳生書記局長が13日、大阪市内で開かれた「躍進のつどい」で行った演説のうち、大阪府政・市政部分の要旨を紹介します。
住民投票「容認」――民主主義を蹂躙する二重の暴挙
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大阪府政、大阪市政はいまどうなっているのでしょうか。
昨年10月、「大阪都」構想の協定書(制度設計案)が大阪府議会と大阪市議会で、維新以外の会派の反対で否決され、橋下・維新の会は窮地に陥っていました。ところが昨年末に事態が急変しました。公明党が突然、「大阪都」構想は「住民投票までは認める」と態度を百八十度転換したのです。菅官房長官が動いて創価学会本部を通じて大阪の公明党の態度を変えさせたと報道されています。
これが事実とすれば、二重の意味で民主主義を蹂躙(じゅうりん)する暴挙です。第1は、安倍首相と官邸が主導して、大阪府・市議会でいったん決着がついた問題をひっくり返すという、地方自治への乱暴な介入です。
第2は、官邸の意向をうけて創価学会が、公明党府本部の態度を変更させるという最悪の政教一体です。
「闇取引」「鶴の一声」によって、2月府議会・大阪市議会で協定書が承認され、5月17日に大阪市の214万人の有権者を対象にした住民投票が実施されようとしています。
大阪の市民は怒っています。創価学会員からも「今度のことは納得いかない」との声が出ています。
4月のいっせい地方選挙、そして5月に実施されようとしている住民投票で、立場を超えた共同の力で民主主義蹂躙の暴挙に断固ノーの審判を下そうではありませんか。(拍手)
「大阪都」構想――庶民のまち壊す三つの重大問題
「大阪都」構想とは何か。私は三つの重大問題があると思います。
(1)「大阪都」にはならない――大阪市をなくし、24区もなくす
第1に、「大阪都」構想は大阪市をなくす構想であり、24区もなくす構想だということです。
「大阪都」構想といいますけども、住民投票で仮に協定書が認められたとしても「大阪都」にはなりません。根拠となる大都市地域特別区設置法にも、協定書にも「大阪都」の文字はありません。大阪府は大阪府のまんまです。結局「大阪都」構想の本質・実態は、「大阪市廃止・解体」構想にほかなりません。住民投票では「大阪市を解体して五つの『特別区』に分割する」ことの是非が問われるだけです。
いいんでしょうか。大阪は庶民のまちです。歴史と文化と人情あふれるまちです。長年の人々の営みによっていまの大都市・大阪が形づくられてきました。
たとえば大阪は「八百八橋(はっぴゃくやばし)」で知られています。川と橋が多い。江戸時代には200の橋がかかっていたと言われています。当時の江戸では350あった橋の半分は幕府が架けた公儀橋だったのに対し、大坂では公儀橋は天神橋、高麗橋などわずか12だけで残りはすべて町人が生活や商売のために自腹を切って架けた町人の橋です。淀屋橋は淀屋という一代で財をなした商人がつくりました。町民がまちづくりの先頭に立ったのです。
NHK連続テレビ小説「マッサン」のなかでも、大阪はいつでもマッサンとエリーを温かく迎える心のふるさと、人情のまちとして描かれています。
この大阪市をなくし、「大阪府」に一本化し、24区をすべてなくして五つの「特別区」にバラバラにする。大阪市民という言葉もなくなり、大阪市民が大阪市のことを決めることができなくなります。それでいいのか。乱暴勝手なやり方で、いまある大阪市、それぞれ愛着もある24の区をなくしていいのか。庶民のまち・大阪の誇りにかけても大阪市をつぶさせるわけにはいかないという答えをみんなで出そうではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
(2)市民プールも地下鉄も――住民サービスを切り捨て、暮らしをつぶす
第2に、「大阪都」構想は、住民サービスを切り捨て、くらしをつぶす構想だということです。
これまでも橋下市長によって、地下鉄・市バスの敬老パスが有料化されました。そのため、市バスの乗降客は1日あたり3万人近くも減少しています。7万を超える存続署名が提出されたのに、住吉市民病院の廃止が決定されました。国民健康保険料も黒字が続いているのに値上げ。「次世代重視」といいながら、新婚家庭の家賃補助は打ち切りです。さらに、保育所・幼稚園の民営化や生活保護行政の締め付けなどなど、橋下市長になって、どれほどの市民いじめ、くらしつぶしがすすめられてきたことでしょうか。
それでも、市民の運動や市議会での共同の力で、ストップをかけてきたものがあります。例えば、市立のプール、老人福祉センター、子育てプラザの廃止・統合計画などは、市民の声で“待った”がかかっています。
ところが、「大阪都」構想で、大阪市そのものがなくなったら、市民運動で守ってきたサービスを守る土台が失われることになります。実際、協定書では、これらを切り捨てることが前提になっています。市民プールはいま24区すべてにあり、年360万人に利用されていますが、「大阪都」構想の計画では9カ所にしてしまいます。
それだけではない。市民の運動、市議会の共同で民営化にストップをかけた地下鉄・市バスも大阪市がなくなったら守ることはできません。現に橋下市長は「地下鉄は府に移して民営化する」と断言しています。
大阪市営地下鉄は、全国最初の公営地下鉄です。大阪市民の税金や寄付金で築いた財産です。それを大阪府が没収したうえで、民間に売り飛ばして、大阪府の財源にしようというのです。市民がつくった大阪城、天王寺動物園や天王寺美術館など大阪市民の財産が次々と大阪府に没収されることになります。
「大阪都」構想は、問答無用で、市民サービスを切り捨て、市民の貴重な財産を没収することとセットの構想なのです。
こんなこと許してはならないという声を、みんなであげようではありませんか。(拍手)
(3)「特別区」は権限も財源も半人前――「一人の指揮官」のやりたい放題にする
第3に、「大阪都」構想では、大阪市を解体したあとにできる五つの「特別区」に、半人前の権限・財源しか与えられません。政令市であるいまの大阪市と比べてはるかに「弱い自治体」にされ、その結果、大阪府知事―橋下氏のいう「一人の指揮官」のやりたい放題の体制がつくられます。
いまの大阪市の税収のうち、「特別区」に直接入る税収は4分の1に激減します。政令市なら徴収できる法人市民税、固定資産税、都市計画税、事業所税が徴収できなくなるからです。これらは大阪府が徴収することになります。大阪市の税収が府に吸い上げられる。橋下市長は、吸い上げても「特別区」のために使うというのですが、全部使われる保証はまったくありません。財源の多くが府の意向に従属するしくみになってしまいます。
国から配分される地方交付税も、五つの「特別区」には直接渡されず、大阪府にまとめて渡されることになります。まさに半人前の権限、財源となるのです。
国民健康保険、介護保険、水道、ごみ、情報システムなど、住民に身近なサービスは、単独の「特別区」では担えません。五つの「特別区」にまたがる巨大な「一部事務組合」をつくって、そこで100を超える事務を一手に引き受けるといいます。これでは「住民に身近」どころか、いまの大阪市より住民の声が届きにくくなることはあきらかです。
東京都の特別区の区議会議員の定数は30人から50人です。ところが、「大阪都」構想では区議会ができても、議員の定数は12人から23人です。住民の声を反映させる住民自治という点で、東京都の特別区と比べても格段に劣っています。
では、大阪市を解体し、弱体化させ、大阪府知事という「一人の指揮官」のもとでやろうとしていることはなにか。
大阪市から吸い上げた財源と福祉切り捨てで浮かせた財源を、高速道路「淀川左岸線」の延伸(概算事業費3000億〜4000億円)、大阪の中心部と関西空港の間をたった5分短縮するためにつくる鉄道「なにわ筋線」(約2500億円)など総額1兆5000億円もの不要不急の新たな開発計画に投じる。さらにカジノ(賭博場)やリニア新幹線の大阪までの早期建設の財源にする。
「大阪都」構想は、「一人の指揮官」によって好き放題できる独裁・暴走体制づくりにほかなりません。これはノーだという声をご一緒にあげようではありませんか。(大きな拍手)
必要なものを壊すだけ――「二重行政」解消のウソ
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「大阪都」構想の本質が知られることを恐れる橋下・維新の会は、盛んに「『二重行政』を解消すればムダが省け、財源が浮く」と宣伝していますが、まったくのウソ、ペテンです。
彼らが「二重行政解消」の名で実際にやってきたことは、「大阪府立」と「大阪市立」の二つの施設があれば、つぶすということにほかなりません。住吉市民病院と府立急性期(総合医療)センターがあるから、住吉市民病院はつぶす。府立大学と市立大学の二つはいらないから統合する。男女共同参画施設も府のドーンセンターと市のクレオ大阪があるから、「二重行政」だといってつぶす。
しかし、府立も市立も、どちらも大事な施設ではないでしょうか。(拍手)
利用者も大変たくさんいて、その方々から「二重だからムダだ」という話は一切ありません。「二重行政」のレッテルを貼って、必要な施設をつぶす。これが「二重行政のムダを省く」の正体ではないでしょうか。(拍手)
松井知事は「二重行政のムダ解消で年間4000億円浮く」などと豪語していましたが、何の根拠もありませんでした。協定書案が出されると、各党がこぞって分析して、「純粋に『二重行政』といえるものはせいぜい1億円」「逆に特別区をつくったら、庁舎建設など初期コストが680億円かかる。5年間で赤字が1071億円になる」と次つぎ批判が突きつけられました。これらにまともな反論はありません。
彼らは旧WTCビルとりんくうゲートタワービルの破たんが「二重行政」の象徴だといいます。これは国が大阪に押し付け、関西財界があおったゼネコン浪費型巨大事業が破たんしたもので、「二重行政」の結果ではありません。「二つあるからアカン」ではなくて、「一つでもあったらアカン」ムダづかいではないでしょうか。(拍手)
維新政治の暴走と対決、府民の共同すすめた共産党
住民投票に先だってたたかわれるいっせい地方選挙で、日本共産党が躍進してこそ、このデタラメな「大阪都」構想ストップ、維新政治ノーの決定打となります。
この間のたたかいで日本共産党が果たしてきた役割は大きいものがあります。
住吉市民病院廃止反対のたたかい、地下鉄・市バス民営化反対、「赤バスを守れ」の運動、府立高校・幼稚園・保育所つぶし反対、市職員への「思想調査」や橋下市長による「慰安婦は必要だった」発言にたいする撤回・謝罪・辞任を求める運動など、あらゆる分野で維新の暴走に正面から立ち向かってきたのが日本共産党です。(拍手)
大阪市議会でのたたかい、堺市長選挙のたたかいなど「維新政治ノー」の共同の発展に、時には縁の下の力持ちとしての役割に徹しながら、誠実に奮闘してきたのも日本共産党です。
「大阪都」構想の危険な本質をいち早く見抜き、ぶれることなく反対の論陣を張ってきたのも日本共産党大阪府議会議員団・市議会議員団です。この日本共産党が伸びてこそ、「大阪都」構想ストップ、維新政治ノーの確かな力になります。
安倍首相の改憲策動を許さない全国的意義
「大阪都」構想をめぐる昨年末の事態急変の背景には、安倍首相の改憲策動の思惑が横たわっています。
安倍首相は1月14日、関西テレビの報道番組に出演し、「大阪都」構想に賛意を示しました。そして「維新が憲法改正に積極的に取り組んでいることに敬意を表したい。維新にも賛成してもらえればありがたい」と発言しました。この首相の発言に橋下市長は大喜びして、翌15日、定例会見で「憲法改正は絶対必要。できることがあれば何でもしたい」とのべて協力する意向を示し、「大阪都」構想の住民投票について「(憲法改正国民投票の)予行練習ですよ」とのべました。住民投票を憲法改悪の国民投票の予行練習にさせるわけにはいきません。(拍手)
橋下・維新の暴走を大阪で食い止めることは、安倍政権の改憲策動を許さないという日本の政治の今後にもかかわる全国的意義を持つたたかいとなっています。
当面するいっせい地方選挙で必ず勝利し、5月実施をたくらむ住民投票で、橋下・維新の野望を打ち破ろうではありませんか。「大阪が変われば、日本が変わる」。この合言葉を高く掲げて、「第3の躍進」を本格的に発展させるため、勇躍して前進しようではありませんか。(長く続く大きな拍手)