2015年2月14日(土)
きょうの潮流
今年はエルビス・プレスリー生誕80年。30億枚のレコードを売り上げたといわれる「キング・オブ・ロックンロール」は、死後40年近くたった今も新たなファンをつかんでいます▼米南部の農村で生まれたプレスリーは第2次大戦後、離農する膨大な南部農民とともに一家で都会のメンフィスに移ります。そこで虜(とりこ)になったのが黒人音楽と、彼らのスタイルでした。ブルース、ゴスペル、R&B…。魂の叫びにのめり込んでいきます▼奴隷制の廃止後も南部で当然のように続いた人種差別や暴力。しかし社会の構造的な変化とともに、多くの若者は音楽をきっかけに“カラーライン”を乗り越えていきます。その象徴がプレスリーでした▼人種差別者たちはプレスリーとロックンロールを「危険な音」と激しく非難しました。しかし彼は、いつも黒人文化から多くのことを学んだと、敬意を表す姿勢を貫いたのです▼人種差別による暴力は現在でも後を絶ちません。白人警官が黒人を死亡させる事件が相次ぎ、FBIの長官でさえ、法の執行機関に「無意識の人種偏見」があることを認めています。イスラム教徒に対する迫害など、新たな差別もひろがっています▼プレスリーの歌に、キング牧師の「私には夢がある」の演説を意識した「明日への願い」というメッセージ曲があります。「ぼくが考えられるうちに/ぼくが話せるうちに/どうかぼくが立てるうちに/歩けるうちに/夢見られるうちに/ぼくの夢をかなえてください/どうか今すぐに」