2015年2月12日(木)
ルネサス長距離通勤女性
体壊し自宅療養に
「高崎に通うのは無理です。早く武蔵事業所(東京都小平市)に返してください」―。東京都内から群馬県まで女性2人に長距離通勤を強いる半導体大手、ルネサスエレクトロニクス。1人が体を壊し、1月末から自宅療養を開始。通勤の過酷さが改めて浮き彫りとなりました。 (堤由紀子)
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自宅療養を続けているのは、新幹線を利用して往復5時間の通勤を強いられている田中美保子さん(53)=仮名=です。
会社からバス代が支給されず、自宅から駅まで毎日30分以上歩いていた負荷が両膝を直撃しました。「特に右膝の腫れがひどくて、水がたまり、プヨプヨした状態でした」
12月初めにやっとバス代が支給されるようになりましたが、「もう遅かった」と田中さん。年末年始に新幹線の遅れが頻発。早めの新幹線に乗るにはバスの時刻が合わず、結局歩かざるを得ず、さらに悪化しました。
年明けの通院で、「これじゃ無理。休みましょう」と医師は2カ月の自宅療養をとの診断書を出しました。今は少し症状が軽減しましたが、つえをついて買い物などにでかけると、翌日に悪化します。
「とにかく高崎はもう無理。通い始めたらまた同じことになると思う。通えないので武蔵に戻してほしい」
「元の職場に戻して」
年末、電機・情報ユニオンとの団体交渉の場でルネサス側は、「総合的に対応したい」と答えていました。本人や電機・情報ユニオン、日本共産党国会議員などによる再三の訴えで、厚生労働省東京労働局が動き、ルネサスに対し4度の助言・指導を行いました。
しかし、ルネサスはいまだに女性2人を元の職場に戻していません。もう1人は、高速道路を使ったマイカー通勤を続けており、高速代の負担がのしかかったままです。
昨年末の早期退職募集で1725人が退職させられましたが、仕事が減ったわけではありません。ある職場では、早期退職に応募しようかと迷っていた社員に上司が「人が足りないのだから、迷っているなら残ってほしい」と声をかけました。
電機・情報ユニオンの米田徳治委員長は言います。「指導・助言に従わず、2人の状態を放置することは許されません。労働者あってこその企業です。一刻も早く2人を元の職場に戻し、安心して働き続けられる環境をととのえるよう、引き続きたたかいます」