2015年2月11日(水)
認知症施策 精神科病院関与を強化
政府、「新プラン」に盛る
「世界の流れに逆行」 現場から批判の声
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政府が1月27日に打ち出した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」。柱の一つの医療・介護などの提供について、各所で精神科病院のかかわりが強められる内容が盛り込まれました。「認知症は初期からの適切なケアがあれば多くが在宅で暮らせる」との認知症ケアの世界的な流れにも逆行すると、医療・ケアに携わる現場から批判の声が上がっています。
今回問題になっているのは新プランの七つの柱の一つ、「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」の部分です。
新プランは、1月7日に「案」が自民党の介護プロジェクトチームに示されたあと、修正、確定されました。
当初案では認知症の人の精神科病院入院について、「必要性を見極めた上で、高度な専門的医療サービスを短期的・集中的に提供する場」となっていました。
確定版では「短期的」の部分を削除。徘徊(はいかい)や物とられ妄想、幻覚、暴力など慢性の行動・心理症状(BPSD)などへの対応には、新たに「長期的に専門的な医療サービスが必要となることも」と加えられました。
BPSDへの対応で、精神科などによる介護サービス事業者などへの「後方支援」(当初案)は、「…後方支援と司令塔機能が重要」(確定版)と、新たに「司令塔機能」が加わり、精神科の位置づけを強化する表現になりました。
日本で、世界でも突出している精神科の長期入院の解消、病床削減、早期支援で重症化や入院を防ぐための地域支援体制づくりが喫緊の課題となっているもと、新プランで「認知症患者を精神科に長期入院させる風潮が強まるのではないか」と逆行への懸念が広がっています。
新オレンジプラン 現行のオレンジプラン(2013年度から実施中)に代わり、4月から着手されます。「住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる社会の実現」を「基本的考え方」とし、柱は七つ。認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進、若年性認知症施策の強化、介護者支援、地域づくり、認知症の人やその家族の視点の重視など。基本的に現行プランを踏襲し、目標数値を引き上げるなどしています。