2015年2月11日(水)
きょうの潮流
建国記念日の定義や性格は国それぞれ。アメリカやインドのように独立を祝ったり、革命を記念するフランスやキューバみたいに。ドイツは東西が統一した日をあてています▼きょう、2月11日は「建国記念の日」。「建国をしのび、国を愛する心を養う」という趣旨で1967年から「国民の祝日」として適用されてきました。しかし、史実ではなく神話を基にしている日本の建国記念は、世界でもまれです▼かつて、この日は「紀元節」と呼ばれました。『日本書紀』の日本神話のなかで初代天皇とされる神武天皇。その架空の人物が即位した日を明治政府が算出し、国民が祝う日として定めたのです▼神の子孫である神武天皇から日本の歴史が始まり、その子孫による統治は永遠に変わらない。日本は神の国である、という天皇中心の歴史観を国民に植えつけるためでした。偏狭な愛国心の押しつけは国の破滅を招きました▼戦後、紀元節は廃止されましたが、自民党政府が「建国記念の日」として復活させます。根拠のなさを指摘する歴史学者、ウソを教えることはできないと反対する教育者。歴史の過ちをくり返してはならない、の声は上がりつづけます▼安倍首相は今年も“建国神話の日”を前にメッセージを出しました。「今日の我が国に至るまでの古(いにしえ)からの先人の努力に思いをはせ、さらなる国の発展を願う」と。彼のいう先人が何を指しているのかは分かりませんが、この国を建ててきたのは神話ではありません。無数の民の力です。