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2015年2月10日(火)

きょうの潮流

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 戦後70年の節目の年。戦争体験者が亡くなっていく中で、悲惨な戦争の記憶をどう保存し、継承していくのか。折しも二つの文学作品に出合いました▼一つは高橋弘希『指の骨』。35歳の著者のデビュー作です。太平洋戦争時のニューギニア島を舞台に、補給をたたれ、飢えと傷病にさいなまれて死んでいく兵士たちの姿を乾いた筆致で描きました。無残な死に向かう兵士それぞれに、懐かしい故郷と穏やかな暮らし、大切な家族のあったことがしのばれる場面は、光のように戦争の非道さを照らし出します▼表題「指の骨」は、戦死した兵士の遺骨とするために指を切り落としたことから。史料を基に圧倒的な想像力を駆使して戦場を表現し、読者に戦争を追体験させる本作は、若い世代への記憶の継承の可能性を示します▼『詩人会議』3月号の巻頭詩「鬼火」も、戦争を知らない世代、52歳の木島章の作品です。被爆した長崎で死んだ幼子を背負い、はだしの足に血をにじませて火葬場に歩いてきた少年。詩人は、ジョー・オダネルの報道写真「焼き場に立つ少年」を見据え、言葉を刻みつけます▼〈直立不動のまま燃え盛る炎を凝視する少年/十歳にも満たないあどけない顔からは/いっさいの表情が消え(中略)彼もまた燃えていた〉▼詩は、二度と戦争はしないという誓いで結ばれ、平和の願いを読者に手渡します。〈ふたたび少年に重い荷を背負わせてはいけないと/七十年たった今も、/ときおり里山で鬼火の行列を見る人がいるという〉


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